関連SS ハルヒ「IBN5100を探しに行くわよ!」 前編 ハルヒ「IBN5100を探しに行くわよ!」 中編 元スレ 再掲 607: ◆/CNkusgt9A:2015/08/12(水) 21:25:05.58 :Yk8l5m+b0 ------------------------------------------------------------ ◇Chapter.7 長門有希のファシーシャスネス◇ ------------------------------------------------------------ ※ファシーシャスネス:facetiousness 遊戯症 2010.08.09 (Mon) 22:30 湯島某所 玄関前 608: ◆/CNkusgt9A:2015/08/12(水) 21:26:24.91 :Yk8l5m+b0 キョン「この中に何も知らないハルヒたちが居るのか……。いろんな体験をしてきた俺だが、タイムリープってやつはどうにも不思議だな」 古泉「4日前のこの日、皆さんは疲労困憊で早めにお休みになったと記憶しています。この記憶と目の前の現実が一致するなんて、不思議な現象ですね」 キョン「よかったな、よくないけど」 ガララッ 長門「……タオル」スッ キョン「おう、長門か。悪いな、助かる」 古泉「ありがとうございます。傘は差していましたが、この雨では濡れないようにするのは大変でした」 キョン「それで長門。疲れてるところ悪いんだが、俺たちを4日後の未来へ戻してくれないか?」 長門「それはできない」 キョン「……へ?」 609: ◆/CNkusgt9A:2015/08/12(水) 21:27:45.69 :Yk8l5m+b0 古泉「それは当然でしょう。タイムリープは“過去に記憶を送る”のです」 キョン「い、いやいや! 未来に送れない道理はなんだ!?」 古泉「未来へのタイムリープは結局、4日後のあなたが4日間の記憶を喪失することと同義です。そして4日後のあなたを成立させるには4日間の記憶が必要。おや、矛盾が生じてしまいましたね」 キョン「……てことはなにか。俺たちはまた8月10日から8月13日をやり直さなくてはならないのか」 古泉「少なくとも8月11日からの3日間は僕たちの記憶とは異なるものとなるはずです。夏休みが4日伸びたと思えばいいじゃないですか」 キョン「このオプティミストめ……」 ハルヒ「有希、どうしたの……って、キョン! 古泉くん!」 610: ◆/CNkusgt9A:2015/08/12(水) 21:28:58.81 :Yk8l5m+b0 ハルヒ「遅い! どこでなにやってたのよ!」 キョン「すまんがハルヒ、怒るなら明日にしてくれ。もう全身くたくたなんだ」 キョン(人工衛星消失事件がまだ全国ネットで話題になってなくて助かったぜ) 古泉「遅くなりまして申し訳ありません、涼宮さん。ですが、この通り財布は見つかりましたので」スッ ハルヒ「見つかったならよかったけど! 有希はどうしたの?」 古泉「僕たちにタオルを届けてくださいました」 長門「」コクッ ハルヒ「……まぁいいわ。ほら、早くお風呂入って、明日に備えて寝なさい」 キョン(明日と言っても体感的には3日前なんだよなぁ……) 611: ◆/CNkusgt9A:2015/08/12(水) 21:30:17.58 :Yk8l5m+b0 2010.08.10 (Tue) 00:03 湯島某所 ピカッ!ゴロゴロ… ザーザーザー キョン(さて、このイベントは回収しておく必要があるものなのだろうか) キョン(やらずに後悔するよりやって後悔云々とはかの元殺人鬼こと現長門のバックアップさんの言葉であるが、しかしわからんものはとりあえずやっておくに越したことがないと思うわけで) キョン(俺も眠いしな、早々に済ませてしまおう。どれ、やっこさんの殊勝なツラでも拝みに行くか) キョン「おーい、誰か居るのか? 電気つけて」 キョン「居ないなら消すぞー、ってハルヒか。何してるんだ」 ハルヒ「アンタ、寝たんじゃなかったの?」 612: ◆/CNkusgt9A:2015/08/12(水) 21:32:30.75 :Yk8l5m+b0 キョン(それから俺は俺の記憶通りに会話を進めた。まぁ、だいたい同じ発言の応酬になったと思う) キョン(なんだか去年の12月に朝倉に刺された“俺”に俺が演技した時を思い出すな。もう慣れたもんだ) ハルヒ「……後は、自分が許せない」 キョン「いつになく殊勝な発言だな」 ハルヒ「『変えたい過去が無いか』って聞かれた時に、悔しいけどちょっと心が動いちゃったのは事実よ。アンタも言ったけど、あたしにだってやり直したい過去の一つや二つくらいある」 キョン(ハルヒのやり直したい過去が、まさかジョンの正体を突き止めておきたかった、だとはな。それで俺とあんなことになっちまうなんて……) ハルヒ「だけど……。やっぱり自分の過去はやり直したらいけないと思った。思い直したの」 ハルヒ「だって、もしやり直しちゃったら、今のあたしたち、SOS団の、みんなとの思い出が、無くなっちゃうような気がして……」 キョン「……心配するな。もしハルヒが思い出をすっかり忘れちまって、それを思い出したいっていうなら、SOS団みんなで何とかするさ」 ハルヒ「……?」 キョン「それにな、どうせハルヒはどんな世界に居ようが、飽くなき探求心と未知への渇望で頭がいっぱいなんだ。過去を変えたところで永遠に欲望は満たされないだろうよ」 ハルヒ「……ふん、よくわかってるじゃない。満足なんてしちゃったら最高につまらないわ」 ハルヒ「でもね、世界はあたしを中心に回るべきなの! あたしに隠れて出てこない不思議は、岩戸をダイナマイトで爆砕してでも引っ張り出してやるわ!」 キョン(太陽神が太陽神を社会復帰させるようじゃ世も末だな) 613: ◆/CNkusgt9A:2015/08/12(水) 21:33:18.50 :Yk8l5m+b0 キョン「さて、そろそろいい時間だ。今日はお前も疲れてるだろ。早く寝ようぜ」 ハルヒ「……そうね。電気代ももったいないし」 キョン(しかし、これでよかったのかねぇ。涼宮三世如来様を焚き付けた件に関してはご寛恕を乞いたいと切に願うね) キョン「それじゃ、おやすみ」 ハルヒ「ん」 キョン(意味深長なうなずきを後に残して女子部屋へと帰って行く我らが御本尊であった) キョン(さて、明日はどうすっかな……) 614: ◆/CNkusgt9A:2015/08/12(水) 21:34:33.44 :Yk8l5m+b0 2010.08.10 (Tue) 09:33 湯島某所 みんなへ 今日の午前中は自由行動にするわ。 疲れてるなら寝てていいし、行きたいところがあるならどうぞ。 お昼は一緒に食べましょう。 SOS団団長 涼宮ハルヒ キョン(やはり例のルーズリーフが貼りだされたか) キョン「ハルヒはテレビを見てないよな?」 古泉「おそらくそうでしょうね。見ていたら今頃人工衛星の消失したラジ館へ直行しているはずです」 キョン「古泉、盗聴できるか?」 古泉「そう言うと思って準備万端ですよ」 みくる「遅くなりましたけど、朝のコーヒー入りましたよぉ」 キョン「朝比奈さん、俺は幸せ者です」 みくる「これから何をやるんですかぁ」 キョン「どうやらハルヒが過去を変えるらしいので」 古泉「その様子を盗聴しようと思いましてね」 みくる「……だ、だめですぅ! 涼宮さんが過去を変えたら、いくら未来人でも手が出せなくなってしまいますぅ!」 キョン「朝比奈さん、心配しないでください。この事件は既に解決済みです」 みくる「へぇ? そうなんですか……」 615: ◆/CNkusgt9A:2015/08/12(水) 21:35:21.93 :Yk8l5m+b0 岡部『ん……? きさ、あ、いや、涼宮ハルヒではないか。今日は一人か?』 ハルヒ『えぇ……。はい、これ手土産よ』 岡部『おぉ……!? おぉ、これはッ!! 知的飲料、ドクトルペッパーではないかッ!! まさかお主、ドクトルペッパリアンなのか!? そうなのか!? そうなのだな!?』 ハルヒ『そこの自販機で見たことないの買ったらクソ不味かったからアンタにあげるってだけよ』 古泉「間接キッスですね」 キョン「古泉、この家にガムテープはあるか?」 古泉「あ、いえ、僕が涼宮さんの飲みかけのドクトルペッパーを飲みたいとかそういうわけでは」 キョン「俺はその口を閉じろと言ってるんだが」 古泉「おっと墓穴でしたか」 616: ◆/CNkusgt9A:2015/08/12(水) 21:36:24.52 :Yk8l5m+b0 岡部『それで、来てもらって済まないがまだ助手もまゆりも来ていないのだが……』 ハルヒ『いえ、その、岡部さんに折り入ってお願いがあるの』 岡部『……ほう、このマッドサイエンティスト、鳳凰院凶真に折り入って頼みだと? ぅいーだろぅ、聞くだけ聞いてやろうではないかッ!!』 キョン(今更だがこの“鳳凰院凶真”というのは、岡部さんの真名らしい。真名がなんなのかと問われれば知らん。俺のあだ名よりかっこいいことは認めよう) キョン「まだこの時の岡部さんはタイムリープを経験していないんだな……。実に楽しげにしゃべる」 古泉「“この岡部さん”は永遠にタイムリープをすることはありませんよ。岡部さんにとって一回目のタイムリープとなるであろう8月13日の20時頃より前である、8月13日16時40分頃に“僕たちの知っているほうの岡部さん”が世界線移動をしてきますからね」 キョン「……やばい、そろそろついていけないぞ、世界線理論」 617: ◆/CNkusgt9A:2015/08/12(水) 21:41:09.85 :Yk8l5m+b0 ハルヒ『……そこの、過去にメールを送れる機械を使わせて。過去を変えたいの』 岡部『ッ、電話レンジ(仮)だと言っておろうが』 ハルヒ『もちろんタダでとは言わないわ。あたしたちがIBN5100を見つけることができたら、アンタのラボに無償で提供してあげる』 岡部『それは願ってもない申し出だが……。それで、どんな過去を変えたいのだ』 ハルヒ『昔ね、あたしを助けてくれた人が居たの。この世界の闇を照らしてくれたっていうか……、ううん、そんな大層な話じゃないんだけど』 岡部『……それが貴様の世界の始まりだった、というわけだな。なかなかにポエマーではないか』 ハルヒ『……あとでたっぷり蹴り飛ばしてあげるわ。とにかく、その人に一言でいいからお礼を言いたいのよ』 岡部『ほう、なるほど』 古泉「なるほどですね」 キョン「なるほどなぁ」 みくる「なるほどですぅ」 長門「なるほど」 618: ◆/CNkusgt9A:2015/08/12(水) 21:42:20.66 :Yk8l5m+b0 岡部『本来この電話レンジ(仮)はラボメンにしか使用を許可していないのだが』 岡部『ラボメンになるためには、契約者同士による血の盟約が必要となる……。その肉、骨、血を天の杯に捧げることを誓い、盟約と言う名の洗礼を受けることにより……』クドクド ハルヒ『長いッ!』 岡部『まったく、最後まで人の話を聞けと小学校で習わなかったのか? ともかく、貴様はラボメンに収まる器ではないと見ているが、違うか』 ハルヒ『おととい言ったでしょ、あたしはSOS団団長涼宮ハルヒであって、それ以上でも以下でもないわ』 岡部『わかっている。まぁ、うちの叔父さんも世話になって、あいや、先公なんぞをやっているのだからむしろ貴様を世話しているのか?』 ハルヒ『どうでもいいんだけど。それで、使わせてくれるの? どうなの?』 岡部『あぁ、そのくらいの内容だったらいいんじゃないか。準備してやるから待ってろ』 キョン「なんだかんだ岡部さんは人が良いんだよな」 古泉「自分は気付いていないだけで兄貴肌なところがありますね。少々コミュニケーションに難ありですが」 619: ◆/CNkusgt9A:2015/08/12(水) 21:43:12.61 :Yk8l5m+b0 ハルヒ『……メール、準備できたわ』 岡部『こっちも準備万端だ。して、メールの内容は?』ヌッ ハルヒ『お、乙女の秘密よ! 見るなバカ!』 岡部『……貴様もか。まぁ、別に構わんが』 キョン(貴様“も”?) 岡部『さぁ、放電現象が始まったら送信しろ』 ハルヒ『…………』 キョン「……なぁ古泉?」 古泉「なんでしょう」 キョン「これって、ハルヒが過去改変を実行しても“なかったこと”になってるんだよな? 俺が打消しDメールを送ったから」 古泉「いえ、この世界線ではまだ打消しDメールは送ってないのでもう一度D世界線へと改変されるかと」 キョン「……俺はまたあの世界に行くのか」 古泉「いいじゃないですか。涼宮さんとのらぶChu☆Chu!を22時間近く堪能できますよ」 みくる「キョンくん……」 長門「…………」 620: ◆/CNkusgt9A:2015/08/12(水) 21:45:34.20 :Yk8l5m+b0 岡部『さぁ、始まった! Dメールを送ってくれ!』バチバチバチ…… ハルヒ『……やっぱり、やめるわ』 キョン「なにっ!?」 岡部『は、はぁ!? 貴様、ここまで準備させといて、やっぱりやめるだとぉ!?』 ハルヒ『…………』 古泉「下唇を噛んでる涼宮さんの様子が容易に想像できますね」 キョン「昨日の夜に俺の話した内容が心境の変化を促したんだろうか」 古泉「変数がそこしかないのでしたら、そうなのでしょうね」 キョン「まぁ、俺としては助かったよ。あんな世界へ二度も身を投じるのはご免こうむりたい」 ハルヒ『やっぱり、やっぱり過去を変えるのはズルい気がしたの』 岡部『貴様もクリスティーナと同じことを言うんだな』 ハルヒ『違うッ! そうじゃなくて……。あたしはまだその人にお礼が言えてないんだけど、お礼を言っちゃったらその人は本当にどこかに行っちゃう気がしたの……。あたしの手の届かない、どこかに』 岡部『…………』 ハルヒ『だから、過去を変えることでお礼を言うんじゃなくて、なんとかして今からそいつを探し出して、この手でふんじばって抑えつけて抵抗できないくらいにぎったんぎったんにして!』 岡部『おいおい、お礼を言いたいんじゃなかったのか?』フッ 621: ◆/CNkusgt9A:2015/08/12(水) 21:48:02.86 :Yk8l5m+b0 ハルヒ『……まぁね。ありがと、倫太郎。岡部って呼んだらあのハンドボール馬鹿とかぶるからね』 岡部『やめろッ! 俺を“りんたろう”などと間抜けた名前で呼ぶなッ! 売れない一発屋芸人みたいではないかッ! 俺の名は、狂気のマッドサイエンティスト、ほーおーいんッ!!!』 紅莉栖『ハロー。……岡部、JKと二人きりでなにやってんの?』ガチャ 岡部『あーっと、えーっと、そのだな……』ダラダラ ハルヒ『あら、牧瀬さん』 紅莉栖『あっ、ハルヒ……。よかった、また来てくれたんだ。一昨日はその、ごめんね?』 ハルヒ『……こっちこそごめんなさい。あたし、あなたのこと、少し誤解してたみたい』 紅莉栖『えっと……なんのこと?』 古泉「さて、この辺でいいでしょう。なかなか貴重なものを聞くことができましたね」 みくる「涼宮さん、かわいい」ウフフ キョン「まったく、山の天気のように気まぐれなやつについていくには世界がいくつあっても足りん」 622: ◆/CNkusgt9A:2015/08/12(水) 21:49:16.28 :Yk8l5m+b0 キョン「それで、この後の展開を古泉は知ってるんだろ?」 古泉「たしか、涼宮さんから電話があって、あなたと二人でラジ館の調査に行きます。ですが芳しい成果は得られず、みんなでお昼を食べた後は女性陣はまゆりさんと楽しく遊び、僕たち男性陣はIBN5100探しをします」 キョン「なんと、あのハルヒが俺をじきじきにパシリとして呼び出すのか。こいつは俺も副々々団長へと格上げかな」 古泉「電気ストーブ運搬の時も直々のお使いだったと記憶していますが。まぁ、僕たちはお昼までゆっくりしてますよ。どうぞごゆっくり」 みくる「あ、あの、涼宮さんの気持ちに応えてあげてくださいね?」 キョン「? あぁ、わかってますよ。怒らせないよう気を付けます」 長門「いってらっしゃい」 623: ◆/CNkusgt9A:2015/08/12(水) 21:50:19.04 :Yk8l5m+b0 キョン(たまには速攻で出て鼻を明かしてやろう) …… プル ピッ キョン「あーハルヒか。これからラボに迎えに行くから待ってろ」ピッ キョン(ふっふっふ……。お前の電話のやり口を、その身を以って教えてやったぞ) キョン(これで今後の電話の仕方を改めてくれるといいんだが、この考え自体がダメダメ少年を更正させるために道具を貸す、未来から来た猫型ロボットの脳内に酷似しているような気もする) 624: ◆/CNkusgt9A:2015/08/12(水) 21:51:46.64 :Yk8l5m+b0 2010.08.10 (Tue) 10:12 大檜山ビル前 ハルヒ「…………」イライラ キョン(そこには仁王立ちで俺を待ち構えるN2地雷があった。助けてくれ綾波) ハルヒ「あんたバカァ!? 電話をかけてきた相手の言葉を一切聞かないやつがある!?」 キョン(でかすぎで星雲になっちまったブーメランが5000光年彼方から飛んできやがった) キョン「たまには鳴らない電話の気分を味わえてよかったじゃないか。あ、いや、しゃべらない電話か」 ハルヒ「あんたの将来が心配だわ……。少年更正プログラムの一環として、警官の目を盗んであの人工衛星を調査する下知状を授けるわ」 キョン(犯罪を助長する罰を課してどうする!) ハルヒ「その前に、今牧瀬さんからおもしろい話を聞いてるのよ! アンタもあやかっときなさい!」グイッ キョン「ひ、引っ張るなって! 牧瀬さんからおもしろい話だぁ?」 ハルヒ「そうなのよ! あの人、あの若さでアメリカの大学院で脳科学研究所の研究員をやってるんですって! そこでどんな研究が行われていると思う!?」 キョン「俺のような凡人には及びもつかない人類の英知を結集した研究をしてるんだろうな」 ハルヒ「データ化した記憶に自我を持たせる実験、その名もAmadeusシステム!!」 キョン(久しぶりにハルヒの顔面からタキオン粒子たっぷりのチェレンコフ放射が行われている。不思議現象とは縁もゆかりも無さそうな科学者トークにあのハルヒが食いつくとはね) キョン(どうでもいいが、アマデウスっつったらモーツァルトのミドルネームだったっけか?) 625: ◆/CNkusgt9A:2015/08/12(水) 21:55:53.92 :Yk8l5m+b0 2010.08.10 (Tue) 10:17 未来ガジェット研究所 紅莉栖「やっほ、キョン」 キョン(アメリカ生活者だからなんだろう、気さくに話しかけてくれる。かと言って馴れ馴れしくなく、どことなく卑屈な響きに聞こえたのは何故だろうか) キョン「牧瀬さん、お邪魔します。なんだかハルヒが世話になったみたいで」 キョン(かと言って俺はTPO的にベストな解答を出すことができず、日本社会に普遍的である無難オブザ無難な態度を取ってしまう。多分、この人にとっては俺やその他凡庸な大多数的コミュニケーションよりも……) 岡部「年下に慕われるだけでニヤニヤが止まらないとは、助手よ、お前、まさか、後輩がいないのか? そーだろうそうだろう! なんたって飛び級セブンティーンだからな! 存分に日本の伝統、先輩後輩関係を味わうがいぃー。かわいそうな貴様に、この鳳凰院凶真のことを、凶真先輩♪ と呼ぶ権利をやろう」 キョン(まさに岡部さんやハルヒのような、とにかくぶっ込んでいくスタイルの人種に対してツッコミを入れるやりとりのほうがこの人にとってはちょうどいいんだろう) 紅莉栖「いらんわ! あと助手でもセブンティーンでもないし、別に年下に慕われたからって嬉しくなんかないんだからな!!」 キョン(マイナー好かれタイプってやつだ。際立って話しかけやすくはないが、何か言ったら的確に言葉を返すタイプ) ハルヒ「ちょっと倫太郎! 今おもしろい話をしようとしてるんだから水を差さないで頂戴」ギロッ キョン(面白い話にゲタゲタ笑うこともなく、つまらない話を無視するわけでもない) 岡部「ヒッ……。あぁ、俺だぁ。何ッ? 例の未知からのメールの結末を固定化しろだと? なるほど、俺が事実を認識することが世界体系の存立に関係しているのだな。わかった、すぐに向かおう。エル・プサイ・コングルゥ」ガチャ バタン キョン(どこかの誰かさんみたいにな。あれだ、適材適所ってやつなんだ) 紅莉栖「逃げたか……」 キョン「牧瀬さん……ともにがんばりましょうね」 紅莉栖「へ? あ、うん……うん?」 626: ◆/CNkusgt9A:2015/08/12(水) 21:57:28.45 :Yk8l5m+b0 キョン「それで、えっと、ハルヒの大学見学の話でしたっけ?」 ハルヒ「うーん、ヴィクトル・コンドリア大学の理論物理学専攻に進学するのも悪くないと思うのよね。タイムマシンもそうだけど、プラズマ宇宙論とか、反重力子とか、アルクビエレのワープドライブとかおもしろそう! 宇宙物理学でもいいわね」 紅莉栖「私は脳科学専攻だけどね。ハルヒが好きそうなオカルト研究会も大学にあるから色々見て回るといいわ」 ハルヒ「だから! オカルトじゃないって言ってるでしょ!!」 紅莉栖「はいはい、わかってる。科学の世界において、その時代にオカルトと笑われているものがいずれ理論体系の正統派へと変貌する事象は過去に何度も発生してる」 ハルヒ「そういうことでもないったら! もう」 キョン(こいつは不思議なものと遊びたい一心なのである) ハルヒ「そんなわけだから、キョン。アンタ理系でがんばんなさいよ」 キョン「……まぁ、ハルヒがSOS団メンバーを大学まで一蓮托生にしようとするんじゃないかとは薄々感づいていたし、それはいいんだが、そのミトコンドリア大学ってのはどんぐらいの偏差値なんだ?」 ハルヒ「世界最高峰だけど?」 キョン「ハッハッハ、ハルヒは冗談がうまいなぁ」 紅莉栖「偏差値が日本の大学のソレに換算した場合、どの程度なのかは私も調べたことがないけど、うちの大学は研究意欲に燃える学生ならだれでもウェルカムよ」 キョン(そんな詐欺行為前提のフィッシングみたいな宣伝文句を言われてもな……) 627: ◆/CNkusgt9A:2015/08/12(水) 21:59:37.91 :Yk8l5m+b0 ハルヒ「キョンの研究意欲を掻き立てるかどうかは知らないけど、紅莉栖の研究所の実験の話は聞いて損はないわよ!」 キョン(いつの間にかハルヒは牧瀬さんをファーストネームで呼ぶほど親しくなったらしい。まぁ、アメリカ的にはそれが普通なのかも知れない) キョン「えーっと、サリエリだったか」 ハルヒ「モーツァルトよ! どうしてそういう無駄知識は豊富なのかしら」 紅莉栖「Amadeusなんだけど……」 紅莉栖「ハルヒが気に入ってくれて私も嬉しいわ。えっと、4月にSCIENCYに載った論文の内容に関係してるものなんだけど、『側頭葉に蓄積された記憶に関する神経パルス信号の解析』っていうタイトルでね」 キョン「あー、牧瀬さん。ハルヒの友人だからそれなりに頭がいいだろうと思って話されているところ申し訳ないんですが、俺はもう既についていけていないレベルなので、小学6年生のうちの妹でも喜びそうな現象面だけかいつまんで話していただけないでしょうか」 紅莉栖「えっ……。あ、あぁ、ごめんね?」 キョン(謝罪されるのが一番グサッと来たが、悪いのは俺の頭のほうである) 629: ◆/CNkusgt9A:2015/08/12(水) 22:01:31.03 :Yk8l5m+b0 紅莉栖「簡単に言うと、“人間の記憶”っていう非常にアナログなものを“電気信号のパターン組み合わせ”っていうデジタルなものに変換することが理論上可能になったの」 キョン「えっと、デジモン、みたいな?」 ハルヒ「話を進めて!」 紅莉栖「うちの研究チームと精神生理学研究所との共同開発プロジェクトの一つとして、この理論とVR<ヴィジュアル・リビルディング>技術ってのを使って、人間の記憶をデジタルデータに変換したものをベースに動作するAIを作っててね」 キョン「AIってのは、たしか人工知能だっけか。だが、それだと情報をY/Nで引き出すだけの装置にしかならなそうなもんだが……」 紅莉栖「正直その可能性もあった。だけど、実際にやってみてわかったのは、彼女、えっと、私の記憶をベースにしたAIはプログラム外に明確な意思を持っていた。答えたくないことには答えないし、その理由が“恥ずかしいから”なんてことはしょっちゅう。嘘だって吐くわ」 キョン「へぇ、そいつは、すごいですね」 ハルヒ「すごいことなのよ! アンタ、もっと驚きなさい!」 キョン(人間というのはむしろ明確な意思を持つことを許可されない生き物なのかもしれない) 630: ◆/CNkusgt9A:2015/08/12(水) 22:03:23.53 :Yk8l5m+b0 キョン(さて、これはいわゆるトンデモ現象なんだろうが、俺は長門からその正体について既に聞いている) キョン(あの世界外記憶領域とかに関するものだろう。そのPC内に記憶を取り込んだAIが世界外記憶領域と連結することによって、人間的な自我を獲得したり、通常の脳における記憶のように動いているのだ) キョン(タイムマシンの次は自我を持ったロボットの反乱か? こりゃシュワちゃん大忙しだな) ハルヒ「それって理論的な解明は全く進んでないのよね?」 紅莉栖「そう。もう、現象面ばっかりが先走ってて嫌になっちゃうわ。証明できない挙動は、それはおもしろいものだけど、せめて少しでも納得できる理論をベースにしてほしいのよね。魂がどうのこうのとか言い出す変な人が沸くから」 キョン(いわゆる宗教団体とかだろう。ガリレオ的対立というのは現代でも伝統的に行われているらしい) ハルヒ「言わせとけばいいのよ。理解される必要なんてないわ! とことんおもしろい現象を追究すべきよ!」 631: ◆/CNkusgt9A:2015/08/12(水) 22:05:10.19 :Yk8l5m+b0 キョン「そのAIってのは、牧瀬さんと瓜二つなんですか?」 紅莉栖「まぁ、当然思考パターンは似ているわね。だけどおもしろいのは、“似ている”程度ということ。全く一緒じゃないわ、というか私から言わせれば全くの別人。双子の妹ってところかしら」 紅莉栖「今年の3月に私の脳から走査したデータをベースにしてるんだけど、研究のために何回か起動してるだろうから、今頃は私の知らない記憶も持っているはずだしね。と言っても自我があるかどうかはわからない。今度帰ったら彼女が独り言をつぶやけるかどうかの実験をする予定よ」 キョン(ということは、人間の牧瀬さんの自我とは別のところにAIさんは自我を形成しているのか) ハルヒ「……なんか、さっきからアンタ、理解してないようで実は誰よりもわかってるって顔をしてるわね」 キョン「へっ? あ、いや、そんなことは」 紅莉栖「言われて見れば確かに。実はキョンってそういうセンスがあるんじゃない?」 キョン「いやいや、無いですって! 俺の脳みそは凡々たる極致ですよ!」 紅莉栖「そういう破滅的なオートサジェスション、自己暗示は精神的にも肉体的にも良くないわ。もっと自分はできる、って信じたほうがいいわよ」 キョン(まさかのスポコン精神論である) 632: ◆/CNkusgt9A:2015/08/12(水) 22:11:10.71 :Yk8l5m+b0 岡部「戻ったぞ。未来の後輩は見つかったか?」ガチャ バタン ハルヒ「あら、いつの間に居なくなってたの?」 岡部「ふっ……ついに俺は気配を完全にシャットアウトする秘儀、“なんと!?無音拳”<キャプテンカーネル>を習得してしまったらしい……」 紅莉栖「あるあ、ねーよ。それで、岡部はどこ行ってたの?」 岡部「あぁ。なんでもラジ館から人工衛星が消失したとニュースでやっていたからな、野次馬に紛れて世界体系の安定化をしにだな……」 ハルヒ「じ、人工衛星が消失!? それってホントなの倫太郎!?」ガシッ 岡部「ぐわっ、胸倉をつかむな! ええい、そんなに確かめたいなら自分の目を使ったらどうなのだ」 ハルヒ「こうしちゃいられないわ! ラジ館に突入するわよ、キョン!」グイッ キョン「なるほど、こういうことか……って、胸倉をつかむな! こけるっ!」 紅莉栖「あっ……。ま、またね、ハルヒ!」 ハルヒ「またね! 紅莉栖!」ガチャ バタン 633: ◆/CNkusgt9A:2015/08/12(水) 22:12:36.98 :Yk8l5m+b0 2010.08.10 (Tue) 10:22 ラジ館 ハルヒ「こっちの裏手なら警備が手薄ね」 キョン「扉の鍵が偶然壊れていることを願うんだな」 ハルヒ「……だめね、鍵はすべて施錠されてる」ガチャガチャ キョン「ならお手上げだ」 ハルヒ「うーん……。あっ、キョン! 上見て! あそこの格子に鉤縄を引っかければ登れるわ!」 キョン「かぎな……、すまん、なんだって」 ハルヒ「ロープの先に鉄鉤がついてる、忍者が使うアレよ! あれがあればあたしが上から中に入って鍵を開けられるのに!」 キョン(……秋葉原には武器屋本舗という店があるぞ、というセリフが喉まで出かかったが、この世界線でも存在してるか自信が無かったことと、もしカギナワとやらが手に入った暁にはハルヒが少年院世界線へと飛ばされるのではないかと心配になったので、俺は出かかったセリフを満を持して飲み込んだ) 634: ◆/CNkusgt9A:2015/08/12(水) 22:14:03.92 :Yk8l5m+b0 2010.08.10 (Tue) 12:10 湯島某所 キョン(1時間も粘ったハルヒだったが、暑さに根を上げたのかようやく梃子が作用した) キョン(まぁ、肝心な実物が消えちまったんだ。頑張って中に入ったとしても得られるものは少なかろう) ハルヒ「でもどうやってあんなでっかいものが一夜にして消滅したのかしら」モグモグ キョン(ちなみに昼飯は肉の万世のカツサンドを土産として宿に持ち帰った。確かに旨いが、財布がヤバい) 古泉「どこのプレスも報道してませんが、ある筋からの話によると、実は在日米軍のヘリが秋葉原上空を雷雲に紛れて飛行していたそうです」 ハルヒ「そうなの!? そっか、暗闇と豪雨に紛れて横田基地へ持ってったんだわ! パーツごとに分解して本国へ送って調査研究するつもりなのね!」 キョン「また適当こいて何か起こっても知らんぞ」ヒソヒソ 古泉「なにかしら着地しておかないとまずいのでは?」ヒソヒソ 635: ◆/CNkusgt9A:2015/08/12(水) 22:15:30.91 :Yk8l5m+b0 その後は古泉の予言通りだった。まぁ、実際俺はさんざ動いたからな。ゆっくり休ませてもらっても罰は当たらんだろ。涼宮大明神以外からは。 翌日8月11日になって、岡部さんがタイムリープしてくることもピンバッジ探しを依頼してくることもなかった。まだ知らないのだ、この“岡部さん”は。 俺たちが知っている岡部さんがこの世界線に来訪してくるのは、タイムリープマシンを使用していないなら8月13日の夕方になるはずだと古泉も言っていた。 8月11日はほとんど俺の記憶にある8月11日と同じものだった。変に演技する必要が無いのは助かる。 具体的に言うと、長門はラボで牧瀬さんの開発手伝いをし、ハルヒと朝日奈さんは椎名さんとフブキさんと萌え談義に興じ、ブクロという名の腐海へ突入する直前に電話で呼び戻した。こればかりは危険だと俺が判断した。 マクディに居た際に長門からハルヒに電話がかかってきたが、内容は、『岡部倫太郎がやっていたボードゲームがおもしろそうなのでSOS団の部費で購入してもいいか』だった。その後俺たちは5人でホビーショップを訪ね歩いたのだった。 636: ◆/CNkusgt9A:2015/08/12(水) 22:16:43.72 :Yk8l5m+b0 2010.08.12 (Thu) 21:32 湯島某所 タイムリープから早くも3日が経過した。 今日はどういうわけか突然ハルヒが、『東京ビッグサイトにIBN5100へのヒントがあるかもしれないわ!』などと世迷いごとを言い出したのでSOS団揃ってサイクリングを決行する仕儀とあいなった。今回はちゃんと自転車の数が足りた。 俺は前回のサイクリング時、『無限サイクリングをする羽目になっても構わないね』などと言ったが、それは二度と繰り返すことがないという前提があって初めて意味を持つのであって、要はあんな苦行は三度とやるもんかと誓った。 全力で東京を駆け抜けたハルヒは気持ち良く疲れたらしく、小学生並の昏倒力によって敷布団の上で幸せな惰眠を貪っていることだろう。その横では朝比奈さんが羊を数えているらしい。 残された面々は談話室で時間を潰していた。俺と古泉は昨日仕入れてきたこの“雷ネットアクセスバトラーズ”とかいうボードゲームに興じていたし、長門は長門で神保町で買った古本を早速読破し始めていた。 637:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2015/08/12(水) 22:17:34.06 :Yk8l5m+b0 キョン「ほら、それウィルスカードだろ。俺の勝ちだ」 古泉「な、なにをおっしゃいますか。それはオープンしてみなければわからないはずですよ。リンクカードであるかどうかの確率は二分の一です」 キョン「お前がシャミセンなんかできるかよ。それにそんな確率論は月にウサギがいる確率と一緒だ。ほい、ほいっと。ほら、やっぱり。俺の勝ちだ」 古泉「……もう一回、もう一回だけ、お願いします」 キョン「なぁ長門。お前自身はリーディングシュタイナーを使えないのか」 古泉「くっ!!!!」ガクッ 長門「使えない」 キョン「どうしてだ? だってお前は古泉の記憶を引っ張ってこれたじゃないか。自分のはできないのか」 長門「できない」 キョン「なぜだ」 長門「わたしが人間じゃないから」 638: ◆/CNkusgt9A:2015/08/12(水) 22:19:34.80 :Yk8l5m+b0 キョン(突然ヘビーな話題を振っちまったみたいだ、と一瞬申し訳なさを感じたが、その数ミクロンの首かしげにはどことなくいたずらっぽさがあった気がする) キョン「つまり、情報統合思念体と、世界外記憶領域ってのは根本的に別もの、ってことだな」 長門「情報統合思念体はあくまでこの世界の宇宙に広域的に存在しているに限る。一方世界外記憶領域は世界の外、無数にある宇宙の全てをオーバーラップする形で存在している。ゆえにわたし自身のリーディングシュタイナー発動は不可能」 キョン「だが、4月の時間軸分岐に宇宙人三人娘は気付いていたんだろ? あれは世界の外側から観測していたわけではないのか?」 長門「時間軸分裂については喜緑江美里が両方の分岐世界を計測することで判断できた。世界の外側から観測したのではなく、両方の世界を観測した結果」 キョン「なるほどな……。わかった、長門。お前が言い出さないのでちょっと遅くなったが、例のアレをやっちゃってくれ」 長門「例のアレ、とは?」 キョン「えっと……、あの、おでこをぴとってやるやつだよ」 長門「こう?」ピトッ キョン「!!!! い、いきなりやるんじゃない!!」アセアセ 639: ◆/CNkusgt9A:2015/08/12(水) 22:21:16.41 :Yk8l5m+b0 キョン「それで、記憶はコピペされたのか」 長門「?」 キョン(なんなんだろうな、この未知との遭遇は) キョン「記憶だよ。俺の記憶を前にもこうやって読み取っただろ?」 キョン(と、自分で発言してようやく気が付いた。この世界線ではハルヒによる世界線改変直前の様子をライブ配信していたのであったのだから、こいつは知らないのだ。俺の記憶では本来その時間に記憶のコピペが行われるはずだった) 長門「……あなたの意図していることがようやく伝達された」 キョン「すまないな、コミュニケーション能力が低くて……」 キョン(と、自分で言って泣きたくなった。まさかあの長門にこの内容で謝罪する日が来ようとは) 640: ◆/CNkusgt9A:2015/08/12(水) 22:22:30.22 :Yk8l5m+b0 キョン「ッ!」 長門「」ピトッ 長門「終わった」 キョン「……ふぅ。あと何回この緊張感を味合わねばならんのだろうね」 長門「この世界線における阿万音鈴羽の1975年以降の状態およびIBN5100の獲得の結果について、すなわち秋葉幸高氏の行動の変化について調査する必要がある」 キョン「あっ」 古泉「はっ」 キョン(完全に忘れていた……。俺としたことが、野郎二人によるIBN5100捜索と称したブラブラ冷房探訪に明け暮れていたために、本来の目的であったIBN5100の行方調査について失念してしまっていた。なんたる本末転倒) キョン「古泉、まだ機関は動いてないか?」 古泉「……少々タイムトラベルという事象に浮かれてしまっていたようです」 キョン「明日が岡部さんの飛んでくる日だが、明日一日でなんとかなるか?」 古泉「善処します」 641: ◆/CNkusgt9A:2015/08/12(水) 22:25:32.41 :Yk8l5m+b0 キョン「そう言えば、明日は“俺たち”がタイムリープした日だったな。……ということは、明日俺たちもタイムリープしなければならないのか?」 古泉「それもそれで本末転倒ですが、そうはなりませんよ」 キョン「だって世界線は変動してないだろ? 古泉がそうやって記憶を維持しているということは、だ」 古泉「そもそもタイムリープは基本的に世界線を移動できません。Dメール自体も本来世界線を移動するものではないのですが、大きく因果の流れを変えることによって現在が大幅に変更されるので世界線が移動した、ように感じるだけです」 古泉「僕たちみたいに自然な時の流れに身を任せていれば、因果の変化はドミノ倒しの一つ一つなのであって、世界線を大幅に移動することは言うまでもなく不可能なのです。それは結局通常の時間変化となんら変わりは無い」 キョン「だが、明らかに世界は変わっている。俺が知ってる出来事が起こらないし、俺の知らない出来事が起こっている」 古泉「それは因果の流れ、順序が変わっただけであって、大局的なところは変わっていないのですよ。たしかに微細な事象は僕らの記憶していた因果の流れとは異なっていますが、おそらくその微妙な違いは今日、明日、明後日と延々と続く」 古泉「つまり、その世界線を世界線たらしめる根幹となる事象自体は変わっていないのですよ。これが収束、というものなのでしょう」 キョン「そう、なのか……。つまり、俺たちのタイムリープはその収束とやらに含まれていないから、明日4日前に向けてタイムリープする必要はない、ってことだな?」 古泉「そういうことです。仮に収束だった場合、嫌でもタイムリープせざるを得ない状況になるはずですね。それはそれは恐ろしい」 古泉「また、仮に僕たちの行動によって世界線が変動していたとしても、それを頭痛として認識できるのはタイムリープ実行直前の時間平面に存在するリーディングシュタイナー保有者、つまり岡部さんだけです」 古泉「要はDメールと同じですね。そしてDメールの受信履歴がそのまま残るように、タイムリーパーは改変後世界のドミノとなって時間流に身を任せるのです」 キョン「……世界線ってのは何を基準にして変動するかしないかを決めてるんだ?」 古泉「おっと、物事の本質を突くご質問ですね。D世界線はどうかわかりませんが、α世界線におけるダイバージェンスは人間が勝手に決めた相対値でしょうから“何らかの根幹的事象”からの相対的距離を元に数値化されているはずです。さて、それは一体なんでしょうか」 キョン「……ダメだ、さっぱりわからん。俺の脳みそじゃヴィクコンなんて夢のまた夢だっつー話だ」 古泉「ヴィクコンですか。涼宮さんからしたら興味の尽きない場所でしょうね」ンフ 642: ◆/CNkusgt9A:2015/08/12(水) 22:26:13.13 :Yk8l5m+b0 ※以下、シュタゲ“アニメ”時系列で 643: ◆/CNkusgt9A:2015/08/12(水) 22:29:02.75 :Yk8l5m+b0 2010.08.13 (Fri) 10:25 湯島某所 キョン(ハルヒたち女性陣は目を覚ますとすぐ雷ネットAB<アクセスバトラーズ>の特訓を開始した。いつから玩具販促アニメと化したんだろうな) キョン(キリがよくなり次第、UPXへ行って腕試しをしようという計画らしい。俺はまぁ、涼めるならどこでもいいが。とにかく機関からの情報待ちってところだ) 古泉「おや、岡部さんからメールです」ピッ ピッ キョン「ほう、なんだって?」 古泉「えっとですね……」 岡部『俺は今までに大規模世界改変を引き起こしたと考えられるDメールを打ち消すことを決意した。それによって元々IBN5100を入手していた世界線にまで戻ろうという作戦だ』 岡部『最初はフェイリスのDメール。おそらくアキバの萌に関するものだ。次に漆原るかのDメール。これはハッキリわかっている、母親のポケベルに向けて野菜を食うよう勧める内容のものを送ることでルカ子の性別を男から女に変えたのだ』 岡部『次に桐生萌郁という人物のDメール。内容はケータイの機種変とあって大したことはないが、やつには気を付けろ。ラウンダーとかいうまゆり殺しの組織の一員、というか主犯だ』 岡部『ともかく、世界線復元の度にキョン少年にリーディングシュタイナーが発動すると思うが、耐えてほしい』 古泉「とのことです」 キョン「……いろいろ突っ込みどころがあって処理しきれないんだが、まぁそれは置いておくとして、IBN5100確保のためには確かに堅実な方法だ。俺のほうはいつテレポートしてもいいように気張ってればいいってことだな」 古泉「突っ込みどころに関しては機関が裏を取りに行きましょう」 644: ◆/CNkusgt9A:2015/08/12(水) 22:31:41.06 :Yk8l5m+b0 長門「通常の人間はDメールを送信した記憶を持たない。ゆえに内容不明のDメールに対する打消しメールの内容を考案する作業は非常に困難」 キョン「おぉ、長門。そういやそうか、リーディングシュタイナーを持ってる人間じゃなきゃ、受信はともかく世界改変後の送信の記憶は無くなる。世界改変をする動機そのものが消えるんだからな」 古泉「ということは、その打消しDメールを作成するには高度な推理力が必要になる、ということですね」 キョン「D世界線での場合は朝比奈さん(大)の時間遡行能力に助けてもらったわけだが……、2006年以前に分岐点がある場合は手伝えそうにないな。漆原さんの件なんてまさにそれだ」 長門「対象者に世界改変前の記憶を挿入すればいい」 古泉「なるほど、僕のように強制的にリーディングシュタイナーを発動させ、自分がどんなメールを送ったのかを思い出させるというわけですね」 古泉「まるで映画『デジャヴ』のようです。主人公は何度も、まぁ映画の演出上は一回ですが、ともかく数度タイムトラベルをし、まだ時間移動をする前の過去の自分にほんのわずかなデジャヴを誘発させる。これ自体は事件解決の鍵ではありませんが、主人公の行動を変えるキッカケとなる。まさにこのデジャヴを利用するというわけですね」 キョン「よし長門。デイリークエストに追加しておいてくれ」 長門「わかった」 キョン(その時の長門は俺にしかわからない微粒子レベルのガッツポーズを決めていた、と思う) 645: ◆/CNkusgt9A:2015/08/12(水) 22:45:42.65 :Yk8l5m+b0 2010.08.13 (Fri) 13:25 UPX 雷ネットABGC会場 キョン(この情報は前から聞かされていた。最初に聞いたときはなんのこっちゃと思ったが、なるほど時間的連続体の中に身を投じていれば違和感などと言うものは皆無で、ごくごく自然な成り行きに感じられる) 長門「…………」パチ 相手A「……ま、負けました」ガクッ 観客「うぉぉぉなんだあの少女!? 眉毛一つ動かさず完勝していくーッ!?」ザワザワ 長門「……デュエルアクセス」キリッ キョン(だが、俺は興味を持ってしまった。一体全体どうしてハルヒと朝日奈さんがここへ来て、そして何をやるのか。なのでなんとかハルヒを説得して、この日は5人で同時に行動することにした) ハルヒ「いっけーみくるちゃん! がんばれー! 特訓の成果を見せつけるのよー!」 みくる「ふえぇー、わかりませんー」 相手B「い、いやいや、定石さえ覚えてしまえばあとは簡単でござるよwwwせ、拙者が手を取り足を取り教えてあげるでござるwwwデュフフwww」 観客「おいあれ……おっぱい……ロリ巨乳……」ザワザワ ハルヒ「じろじろ見てんじゃないわよ! 金取るわよ!」 キョン(もちろん一昨日その存在を知ったばかりのど素人がグランドチャンピオンシップなどという大それたタイトルに出場できるわけもなく、俺たちはその脇でこじんまりと開催されていた雷ネットアクセスバトラーズ初心者講座<ビギナーズバトル>とやらに参加していた) ハルヒ「だぁー! もう、そうじゃないったら! 帰ったら特訓よ!」 みくる「ふぇぇ」 キョン(こいつは朝比奈さんを何に仕立て上げたいんだろうね) 646: ◆/CNkusgt9A:2015/08/12(水) 22:47:02.08 :Yk8l5m+b0 キョン(とまあ、そんな感じで冷房の良い具合に効いた室内で時間を潰していると、本イベントのメインディッシュであるところのグランドチャンピオンが決定したらしい) 司会「……今大会のスーパーエンターテイナーに、皆様もう一度盛大な拍手を!!!!」 ??「みんなー!! 応援ありがとニャーン!!」 ウワァァァァァァ!! パチパチパチパチ!! ニャンニャン!! キョン「って、あれはフェイリス・ニャンニャン!!」 古泉「あの方があなたの言っていた猫耳メイドさんですか。なかなか可愛らしい方ですね」 キョン(そうか、この古泉はアキバが萌えの街だった世界線のことは記憶していないのか) キョン「なぁ、直接あの猫娘にIBN5100のことを聞いたほうが機関の諜報活動より事が早く済むんじゃないか?」 古泉「二方面作戦でどうでしょうか。まぁ、聞くことができたら、という希望的観測みたいですが」 キョン「はぁ? なに言って……って、あれ? フェイリスさんはどこ行った?」キョロキョロ 647: ◆/CNkusgt9A:2015/08/12(水) 22:48:42.76 :Yk8l5m+b0 古泉「ッ! 居ました、あそこです!」 キョン「へ?……なんで走っているんだ?」 古泉「どうやら危ない連中に追い回されているようですね。これはどうやら、ちょっとやばい事態みたいです」 キョン(な、なにがどうしてこうなってるんだ? えっと、トンデモ現象とは関係なく普通に事件なのか?) キョン「……ハルヒへの言い訳は俺が考える! 古泉、機関の力を使って全力で暗躍してくれ!」ダッ 古泉「IBN5100のため、ひいては団長のためです。任せてください、人死には出しませんッ!」ダッ 648: ◆/CNkusgt9A:2015/08/12(水) 22:49:48.04 :Yk8l5m+b0 キョン「ハルヒ! ハルヒ、ここにいたか」ハァハァ ハルヒ「なによ、どうしたの? ちょうどみくるちゃんのゲームが終わったところだけど」 キョン「なぁ、ちょっと考えてみてほしいんだ。例の椎名さんのメイド姿なんだがな」 ハルヒ「……いきなり何の話? 脈絡が無いとアンタちょっとヤバイわよ?」 キョン「いや、やばくてもいいから聞いてくれ。お前ならどんなメイドコスを提案する」 ハルヒ「はぁ?……そうねぇ、あの子フリル着せると金髪が似合いそうなのよね」 キョン「そうだな! 髪型はやっぱりポニーテールだな!」 ハルヒ「……髪型はツインテールね。それで、カチューシャをつけたいわね! 猫耳がいいわ!」 キョン「そうだハルヒ、猫耳だ。椎名さんの猫耳は何があっても守られなければならない、そうだな?」 ハルヒ「はぁ? うーん、そりゃ猫耳は神聖にして不可侵の存在だからね。アンタみたいな俗物の手からは守られなければならないわ」 キョン「よく言った、それでこそ団長様だ。悪いがハルヒ、俺と古泉はちょっと寄り道してから帰る。じゃぁな!」ダッ キョン(これでハルヒによる言挙げは充分だろう! 慢心はないッ!) ハルヒ「あ、ちょっと!……なんなの、アレ」 649: ◆/CNkusgt9A:2015/08/12(水) 22:51:08.48 :Yk8l5m+b0 2010.08.13 (Fri) 17:25 UPX 1F 屋外 キョン(さて、この次はどうするか……)タッタッタッ プルルルル ピッ 古泉『追手側の素性がわかりました。決勝戦でフェイリスさんに敗北したヴァイラルアタッカーズという集団で、かなり悪名高いようです』 キョン「逆恨みってことか。ぞっとしない話だ」 古泉『実行犯は下っ端、背後にはケータイを使って駒を動かしているリーダーがいるようです』 キョン「将を叩かないと永遠にイタチごっこか。古泉はなんとかしてソイツの居場所を突き止めろ。ついでに警察に突き出してやれ」 古泉『了解です。ご武運を』ピッ キョン「……とは言ったものの、あいつらどこに……、あ、岡部さん!」 キョン「岡部さんとフェイリスさんが手を取って、あの変な服装のやつらから逃げ始めた……」 650: ◆/CNkusgt9A:2015/08/12(水) 22:53:08.15 :Yk8l5m+b0 キョン「どうする、俺が走って追いかけて意味があるか……」 長門「このタイミングでフェイリス・ニャンニャン、本名秋葉留美穂のリーディングシュタイナーを誘発させる」 キョン「うおっ、長門。こ、このタイミングでか?」 長門「古泉一樹に施したような完全記憶置換は今回は推奨しない。現在世界線の記憶が消滅してしまうから」 キョン「お、おう。それはまぁ、わかる」 長門「ゆえに部分的に記憶をダウンロードするように仕込む。短時間に大量のデータを挿入すると脳出血、あるいは脳に関する疾病を引き起こす恐れがあるので、必要最低限の記憶を、その記憶と密接に結びついた言葉や場所、印象などをトリガーとしてダウンロードする」 キョン「……それって危険じゃないのか?」 長門「元々リーディングシュタイナーは人間に潜在的に有する通常の能力。リーディングシュタイナー誘発は身体能力の強化と変わらない」 キョン「そんなもんか……。だが、どうして今なんだ?」 長門「秋葉留未穂の過去改変は秋葉原の街全体に関するもの。岡部倫太郎と街中を走り回っている今ならばトリガーが多いはず」 キョン「はぁー、なるほど。とは言っても、ホントにやばそうになったら長門の力で二人を救出してくれ」 長門「わたしは古泉一樹を信じている」 キョン(長門がそういうセリフを言う日が来るとはね……。よかったな古泉、絶対教えてやらねぇ) 651: ◆/CNkusgt9A:2015/08/12(水) 22:55:01.98 :Yk8l5m+b0 長門「」スッ キョン(長門が交差点の斜向かい、NRの高架下をやおら指差した。その挙動はまるで蝶の羽ばたきのごとくふわりとしたものだった) キョン「って、あれは岡部さんとフェイリス・ニャンニャン! ぐるっと一周してきたのか」 長門「今から断片的リーディングシュタイナーを秋葉留未穂に挿入する。許可を」 キョン「……わかった。やってくれ」 キョン(そういうと長門は突き出していた右手の手のひらを上向きにして開き、何かを柔らかく投げ飛ばすような仕草をした) キョン(そこにはいつの間にかインディゴブルーのオーラをまとった一羽の蝶がひらひらと飛んでいた。しかしそれはまるでこの世のものとは思えない存在感で、少しでも気を抜けば見失うような透明感だ) キョン(そしてそれは、俺の視線からしてあ�…