台湾には、道端に落ちている赤い封筒を拾ってはいけない、という話がある。赤い封筒といえば、本来はめでたいものだ。旧正月、結婚祝い、お年玉。中にお金が入っていれば、普通なら幸運に見える。だが、その封筒の中に入っているのが、写真、髪の毛、生年月日を書いた紙だったらどうか。それを拾った男性は、すでに亡くなった女性の「夫」として選ばれる。拾う、という何気ない行為が、死者との婚礼の入口になる。怪談のような話だが、これは台湾や中国の一部で語られてきた「冥婚」という風習と結びついている。冥婚とは、亡くなった人に結婚相手を与える儀礼のことだ。死者同士を結婚させる場合もあれば、死者と生きている人間を形式的に結びつける話もある。現代の感覚では奇妙で、不気味で、どこか理解しがたい。けれど、この風習が妙に気になるのは、単に「死者と結婚する」という異様さだけではない。人はなぜ、死んだ人にまで「結婚」を与えようとしたのか。…