
神奈川県松田町が、町民の足を確保しようと実証実験を進めていたAIオンデマンドバス(AIバス)の廃止が決まった。3年間で約1億1100万円の公費を投入したものの、委託先の赤字が膨らみ、再委託先の運行会社への未払い金が約8000万円にも上っているためだ。何が起きたのか、背景を探った。 ◇「公設民営」で法人設立 町などによると、AIバスの実証実験は、町や自治会の代表者、交通事業者らが集う地域公共交通会議(地公会議)で導入が決まった。国や県の交付金を活用し、公設民営の形式を採用。運営主体として2023年4月、梶田佳孝・東海大教授を理事長とする一般社団法人「足柄オンデマンド(AOD)」が設立された。町がAODに運営を委託し、さらにバス会社1社とタクシー2社に運行を再委託する枠組みで事業を進めることになった。 AIバスは町が「のるーと足柄」と名付け、利用者がアプリで乗降地点を予約すると、AIが最適なルートを導き出す。同年10月に運行を始め、町全世帯の3分の1にあたる約1500世帯が月額会員になるなどと見込んでいた。 ◇月額会員伸びず しかし、すぐにつまずく。月額会員は24年2月で67世帯にとどまり、運行開始から半年後で約2980万円の赤字が見込まれた。その後も収支の悪化は止まらず、これまでの計約3年間でAODの赤字は約8800万円に膨らんだ。運行会社への未払い金も約8000万円に上っているが、町は「民間同士の契約」という理由で補塡(ほてん)しないとしている。 AODは24年5月、運行するバスの台数や頻度を減らし、利用料を値上げするなどの改善策を地公会議に提案。だが、関係者らは「さまざまな注文がつき、案通りには進まなかった」と振り返る。 ◇見え隠れする「ずさんな運営」不可解なこともある。町は、23年度末にAODの収支が悪化していたのに、24年度に1218万円かけてトヨタの高級車「アルファード」などを購入している。「AIバスの備品」という名目だ。本山博幸町長は取材に「まだ使っていないが、これから使う」と話した。 また、AODは23年度末、人件費1959万円、顧問料など574万円を支出していた。運行開始からわずか1年ほどで、町長と共に立ち上げの中心となった「町官民連携まちづくりアドバイザー」など、AODの理事の半数にあたる3人が退任したことも分かっている。 ◇責任はどこにあるのか 責任はどこにあるのか。運行会社3社は「町に頼まれたから参画した。(未払い金は)仕事をした分については返してほしい」と口をそろえる。…