
環境に優しい次代の乗り物として期待され、すでに公道を走る電気自動車(EV)バスに故障が続発している。 そのバスは、北九州市に本社を構える新興企業、EVモーターズ・ジャパン(以下、EVMJ)が販売したもので、大阪・関西万博では150台が導入されている。EVMJは“国産EVバス”を謳い文句に全国の自治体や企業に売り込んできたが、その実態は中国メーカーが製造したものであり、相次ぐ不具合を受け、国土交通省も立ち入り検査に踏み込んだ。 EVMJはたしかに日本企業だが、実態としては中国メーカーが製造したEVバスを日本で販売しているに過ぎないのだ。 EVMJは中国メーカーに製造を委託しているわけだが、中小機構のリリースにもあるように、「最終組み立て工場」を建設し、商用EVの量産に取り組んでいるとも説明されてきた。 ただ、元社員はその内実をこう証言する。 「日本国内で自動車製造をして販売する、つまり国産メーカーとして認められるには国土交通省に型式指定の届出をする必要があり、本社事務や工場の製造ラインはもとより製造車両の品質、安全性の担保が求められます。 海外から仕入れて売るだけの“並行輸入業者”がある日突然“国産メーカー”になれるはずがありません。 しかし、経営陣はタイヤや座席を外して付け直すなど一部の工程を日本の工場でやれば、国産にできるといった発言を繰り返していました」 中小機構が持ち上げた「アクティブ・インバータ」についても問題があるという。元社員が続ける。 「EVMJのバスのカタログをはじめ、いかに高性能で、電費が良いかをアピールするために持ち出したのが、EVの心臓部ともいえる独自のインバータです。中国の著名技術者が開発したもので、佐藤社長とも交流があることから、会社の目玉としてアクティブ・インバータ搭載のEVバスを輸入したのです。 しかし、実際にアクティブ・インバータが搭載されているのは販売した317台のうち、初期の頃に納車された約20台だけです。それ以降は、一般的な中国製インバータを搭載しており、電費もすこぶる悪い。重要な仕様変更なのに公にされていません」 この元社員は証言の根拠として社内資料を示し、そこには同社が販売したEVバスのナンバー、顧客名、車両識別番号などとともに搭載されたインバータのメーカー名が一覧で記されている。 こうしたやり方に社員の一部が異を唱えたこともあったという。直接経営陣に疑問を投げかける会議が開かれたのは万博開催の約2年前、2023年8月のことだ。筆者は関係者から当時の音声データを入手した。 並行輸入のEVバスを日本の公道で走らせる(ナンバーを付ける)には、国連が定める安全認証のテストデータを部品ごとにすべて揃える必要がある。しかし、当時のEVMJのバスはそれらの認証がすべて揃ってはいない状態だったという。危機感を覚えた技術系の社員らが、北九州市のホテルで経営陣を追及した時の音声には、次のようなやり取りがある。 社員が「(認証がないことを)お客様に公言することなく売り続けろというのが会社としての判断か」と投げかけると、佐藤社長はこう言い放った。 「売りたくないんだったら売らなくていいです」 ここで社員の声に経営陣がしっかりと耳を傾けていれば、現在の不具合多発の状況は免れたのではないか。 全国で相次ぐ車両トラブルや不十分な安全管理体制、インバータの変更が公にされていないといった疑問をEVMJにぶつけたが、期限までに回答はなかった。 …