
感染の法則:ウイルス伝染から金融危機、ネットミームの拡散まで 1: 2025/06/15(日) 16:35:55.02 ●日常の一コマを描いたイラストから始まった 現在35歳のいびりょさんがイラストを描いて投稿したのは、2008年だった。高校を卒業したばかりだったといういびりょさんは当時をこう振り返る。 「絵を描くのが好きだったのですが、その頃、山崎まさよしさんが自分で描いた自画像をアルバムのジャケットにしていたのを見て、自分もそういう絵を描けたらいいなあと思いました。 チーズ牛丼は、通学路で電車が来るまで待っている間に行っていた牛丼屋さんでよく食べていたやつを、なんとなく自分に結びつけてセリフにしたものですね」 自分の日常の一コマを描いたといういびりょさん。2008年はインターネットが普及し、mixiなどのSNSが流行し、YouTubeやニコニコ動画がサービスを本格化させていた。個人ブログも人気で、いびりょさんも自身のブログに毎日1枚ずつイラストを投稿していたという。 「チー牛」のイラストもそのうちの一枚だった。 「当時、見ていたのは身近な人たちで、10人くらいだったと思います」 ところがその10年後、イラストは思わぬところで広がっていく。 2018年ごろ、巨大ネット掲示板「5ちゃんねる」で、しばしばこのイラストが貼られるようになっていた。「陰キャ」のイメージとして多用され、2019年12月のコミケには、イラストに似せた「チーズ牛丼の男性」のコスプレまで登場した。 2020年の春にはいびりょさんのSNSアカウントのフォロワーが増えたという。イラストの拡散をどう感じていたのだろうか。 「びっくりしましたが、言われてみれば、掲示板に書いてある通り、たしかに垢抜けてないなあと。そのときはそんなふうに流していました」 そして今、Xなどでは、イラストと「チー牛」というネットスラングが、一部の男性を揶揄したり、自嘲する際に使われるようになっている。「チー牛」を使った投稿が侮辱にあたるとして、発信者情報開示が認められたケースもあるそうだ。 いびりょさんは現在のネットの状況について、こう語る。 「あのイラストを描いた当時は、率直に、たまたま描いた自分の顔がイモくさくて、ダサいものだったという塩梅がよかったなと自分では思っています。でも、現在の使われ方として良くないと思うのは、イラストを利用して特定の人たちを悪く言ったりすることですね。 あのイラストをマスコットキャラみたいに描いている人もいました。その絵については賛否両論もありましたが、あのキャラクター自体をおもちゃにしてもらう分には、そういう文化は昔からありますし、もう笑うしかないというところまで突き抜けたユーモアがあればいいなと思います」 たとえば、「チー牛」という言葉に対抗して、ネットでは一部の女性たちを「豚丼」と呼ぶ人たちもいる。 「それも悪意のある使い方ですよね。男性と女性、マジョリティとマイノリティ、どの立場でも関係なく、自分が不快に思う相手を攻撃するのは嫌ですね」 今や、いびりょさんのイラストはネットで見ない日はないほど、多くの人々が使い、また二次創作もおこなっている。作者として、どう思っているのだろうか。 「もうネットミームとして流通してしまった以上、全部を管理するのは不可能だと思います。だからこそ、楽しく、賢く、誰かを傷つけない形で"遊び倒して"もらえたらうれしいですね。イラストの使い方が過激化したときには、ガイドラインを作ろうかと考えたこともありました。でも今は、使う人の良識に任せたいというのが、最終の着地点です」 2008年にネットに投稿された男性の自画像が、時を経て、2020年代のインターネット文化に深く根づいている。いびりょさんの体験と言葉は、ともすれば言葉の暴力が横行するネット空間に大きな気づきを与えてくれるのではないだろうか。 ※関連記事 【動画】暴力型チー牛、金髪Z世代をボコボコにしてしまうwwwwwwwwww…