1:おっさん友の会 ★:2025/04/20(日) 10:35:08.35 ID:HD0V0KX29.net ●見た目で測られる所有者像 インターネット上では長らく、「スポーツカー = “チー牛”ご用達」という短絡的な言説がはびこってきた。「チー牛カー」なる言葉まで存在する。ここでいう「チー牛」とは、牛丼チェーンで「チーズ牛丼の特盛・温玉付き」を注文しそうな見た目の若者、というネットスラングに由来する。 一般的には、 ・痩せ型でメガネ ・無口そうな風貌 ・地味な服装 ・冴えない表情 を特徴とされ、ネット文化においてはオタク的気質と結びつけて語られることが多い。 このスラングが広まったのは、単なる容姿の揶揄ではなく、自信がないのにこだわりだけは強そうというある種の性格像までをも一括りに嘲笑の対象としたことにある。いい換えれば、 「社会的に承認されづらい人物が、自分の趣味や嗜好を誇示している」 という構図が、匿名的なネット空間で格好のからかいネタとして消費されているのだ。 こうしたチー牛という記号は、ネット世代におけるある種の「弱者男性」の象徴でもある。恋愛や社交、外見といった文化資本を持たないとされる若者像が、趣味への課金や自己表現を通じて存在感を示すことに対して、 「身の程をわきまえろ」 といわんばかりの抑圧的な空気が形成されている。このようなレッテルがなぜスポーツカーという車種に貼り付けられるのか。そこには、目立つ存在への注目と反動、そして文化的無理解が交錯しているのではないか。 スポーツカーというジャンルは、単なる交通手段ではなく、自己表現や憧れ、個性の象徴としての側面が強い。だが、その目立つ存在に対して 「見た目が釣り合っていない」 【中略】 スポーツカーのユーザー層は果たして本当に限られているのか。現実のデータを見ると、決してそんなことはない。たとえば、GR86、スープラ、フェアレディZ、シビックタイプRなど、20~30代の購入者が顕著に増えているといわれている。 とりわけSNSや動画配信文化との相性のよさもあり、スポーツカーは若年層の憧れとして再評価されている。一方で、1990年代のスポーツカー黄金期を知る40~50代のリターンユーザーも多い。つまり、チー牛的なキャラクターに限定された市場ではない。実際のユーザー層は、社会人歴の長い中年層から、クルマ趣味に目覚めたばかりの若者まで幅広い。 にもかかわらず、チー牛ご用達というような表現が広まる背景には、目立つ存在を嘲笑することで、自分の位置を確保しようとするネット特有の文化がある。 ●似合うか否かを裁く風潮 スポーツカーが特異なのは、車のイメージと乗る人間のイメージとのギャップが過剰に取り沙汰される点にある。スポーツカーに対しては、なぜか ・細身でスタイリッシュな若者 ・ドライビングテクニックに長けた人物 といった無言の理想像が存在している。この幻想と現実とのギャップが嘲笑の対象になる。仮にその車に乗る人が、ぽっちゃり体型で、アニメグッズを飾っていたとしたら、SNSでは 「痛車」 「オタクの無駄遣い」 といった言葉が飛び交う。だが、これがSUVやミニバンならどうだろうか。大型のアウトドア車に乗りながら、キャンプにも登山にも行かない人は山ほどいる。それを批判する声はほとんど聞かれない。似合っているかどうかなど問われない。 つまり、スポーツカーが乗る資格を問われるジャンルになってしまっているのだ。この構造自体がきわめて特殊である。 ●若年層に広がる購入忌避 車は本来、単なる移動手段であると同時に、趣味や自己表現の手段でもある。なかでもスポーツカーは、速さや走行感覚、美しさを追求するカテゴリーだ。実用性ではなく、「好きだから選ぶ」が成立する領域といえる。 しかしこの好きだから買ったというシンプルな動機が、 「似合わないくせに無理をしている」 といった揶揄に変わる社会は、あまりに寛容性に欠けている。このような空気が広がれば、車文化全体の自由度が損なわれる。 2025年4月19日 Merkmal…