大学時代、深夜までバイトをしていた頃の話だ。俺は帰り道にタクシーを使うことが多かった。終電を逃すこともしばしばで、仕方なくタクシーに乗っていたが、ある日を境にそれが怖くなった。その日も深夜2時を過ぎていて、俺はバイト先の前の道路でタクシーを拾った。運転手は無愛想な中年の男だった。無言で乗せると、ただ「どこまで?」と聞かれ、俺は自宅の住所を伝えた。タクシーは静かに走り出した。深夜の街は静まり返り、車のエンジン音だけが響く。ぼんやり外を眺めていた俺は、次第に違和感を覚えた。「…遠回りしてないか?」…