1 「正直に言ってほしい。それだけ告げました。妻はじっと結果を見ていましたが、『だまっていてごめんなさい』と。 そこからぽつりぽつりと話したことをつなぎあわせると、僕には何の不満もない。 ただ、あるとき取引先の男性に会って心臓が止まるほど驚いたと。その人は彼女の中学時代の初恋の人だった。 片思いのまま告白もしなかったけれど、彼は1年生が終わると同時に挨拶もなく越していったというんですね。 それで彼女の心の中には彼の存在が焼きついてしまった。 もちろん結婚後はほとんど思い出すこともなかったけど、偶然出会って、また恋心がよみがえった、と」 “離婚するしかないの?”と言われたとき、ヒデキさんはドキッとした。 離婚などまったく考えていなかったからだ。そういう選択肢があるのかと改めて感じた。 「人として試されている」とすべてを受け入れた夫 妻はじっと聞いていたが、彼の目をまっすぐに見た。そして「愛せる?」と尋ねた。 もうすでに2年も一緒に暮らしているんだから、愛していると彼は答えた。「きみのこともね」と彼はつけ加えた。妻は号泣したという。 彼はすべてを受けとめ、受け入れた。 この先、夫婦関係や親子関係がどうなるかはわからない。だがそのつど、起こったことを受け止めて受け入れていくしかないのかもしれないと彼は穏やかな笑みを浮かべた。 3 イイハナシダナー 5 涙が止まらない 7 托卵されても許す夫 11 >>7 つよい…