820本当にあった怖い名無し 2010/10/04(月) 20:45:58 ID:ErsFOF2o09年前のある日、釣りに出かけていた兄が顔を蒼白にして帰宅した。がたがた震えている兄に話を聞くと、「怖い思いをした。○○ガマへは行くな。あかんぞあそこは、コワイモンがおる。」と繰り返している。あたたかい紅茶を飲ませ、母と話を聞くとこうであった。兄はこの時期いつも釣りに通っているリアス式の湾内にこの日も朝からでかけた。自分たちは○○ガマといって、このガマというのは平家の落人が日々の生活のため塩田を切り開いた土地で、この地方にはいくつもそのような何々ガマという地名がある。照葉樹林に囲まれた湾内の水面は鏡のように静かで湖のようにみえる。そのようなリアス式の入り組んだ小さな小さな湾のひとつが自分たち家族が通い詰めた場所であった。自分たちは○○ガマと呼んでいた。死んだ父と兄と自分で小さい頃から通い詰めた場所で、知り合いなら竿二本。先客がいたら、そこで竿を出すのをあきらめなければならない畳二畳ほどの小さい石積みがある。そこに行くには上のぐねぐねした細い道から30mほどの獣道を下りらなければならない。小場所だけに場所を知られるのを恐れた父は車を少し離れたところにとめて通い詰めるなどしていた。十年ほど前からここに通うのは我々だけになってもここを発見されるのを恐れ車は遠くに駐車するようにした。自分たちが小さい頃、父が見つけたこの場所は父が死んでも秘密の場所だった。しかし、その場所はよくつれるのかというとそうでもなかった。ただし20m先の水深が4mでフラット。底は砂地で自分たちの釣り方に合っていたし、春夏はうるさいほどウグイスが鳴き、向かいにある廃業した真珠選別所でまれに漁師が網を干している以外はどこからもみえない。よって、この場所は、GWでも盆休みでも人は来ず。鏡のような湖面に浮かぶウキを見ていると、それだけで癒されるような気持ちになるのだ。…