3月13日、イタリアのカーデザイナーの巨匠、マルチェロ・ガンディーニさんが亡くなった。85歳だった。 ガンディーニさんは、ドアが上に開く「シザーズドア」で知られるランボルギーニ・カウンタックをはじめ、ランボルギーニ・ミウラ、ランチア・ストラトスなど、数々の高級車のデザインを手がけた。日本車でも、1980年代に量産されたマツダのルーチェや、日産のコンセプトカーAP-Xなどに携わっている。 元レーシングドライバーで自動車評論家の桃田健史さんは、20年ほど前、ガンディーニさんの自宅を訪れ、アトリエを見るという貴重な体験をした。 『これまでいちばん優れていると感じたカーデザインはなんですか?』と水を向けると、『“ジャバニーズ軽自動車” に決まっているだろ』と、断定的な言い方をしたんですよ。“ジャパニーズ軽” が突出していると。英語の『コンパクトカー』などではなく、まさに『ケイ』と言って、ほかにはないというような口調でした。 決められた車両規格のなかで、日常的に使え、スポーツ仕様からファミリータイプまで多様にあり、なおかつ価格まで安い。『こんなものはあり得えない』と。ものすごく優れていると強調した姿が強く印象に残っています」 さらに驚いたのが、愛車がスズキの「ワゴンR」だったこと。 「出かけるときは、ほとんどこれしか乗らないとおっしゃっていました。ご自宅は山の上のほうにあるため、周りにスーパーなどがほとんどなく、車で20~30分走らないとお店にたどりつかない。だから、『買い物のときはワゴンRで行くから』と」…