今年上半期に神奈川県内で確認された自転車盗が前年同期に比べて約5割増、オートバイ盗も同約7割増と急増していることが、県警への取材で分かった。新型コロナウイルス禍が和らいで人流が活発になったことが背景にあるとみられるが、自転車が自動で固定される有料駐輪場で自転車本体に鍵をかけなかったり、食事宅配サービス中にオートバイにエンジンキーを挿したまま離れたりといった〝気の緩み〟が落とし穴になっているケースが確認されている。 「盲点となっている」。県警生活安全総務課の滝沢裕課長代理は自転車盗で確認されている手口の1つに警戒感を示す。自動でタイヤにロックがかかる有料駐輪場での盗難で、精算するまで自転車が設備に固定されるため、安心感からか自転車本体に施錠せず、他人が精算、固定を解除して盗み出している。 自転車盗の6割以上は無施錠の状態で起きており、持ち主の心のすきを突く形で行われている。同課によると、自転車盗の件数は6月末時点で前年同期比47・1%増の5092件に上る。オートバイの盗難はさらに増加の割合が大きく、前年同期比68・9%増の657件だった。 盗難の発生場所としては、自転車、オートバイともに戸建てや集合住宅の敷地内が最も多い。駅や商業施設の駐輪場、駐車場を抑えて、全体の4~5割を占めており、「家の敷地内だからと安心して施錠をしないケースが多い」(滝沢氏)。同課は施錠徹底に加え、付属の鍵とあわせてワイヤ錠などの補助錠を活用する「ツーロック」も防犯効果が高いとしている。 食べ物を配達中のオートバイも標的にされている。川崎署が管轄する川崎市内のエリアでは、食事宅配サービス「ウーバーイーツ」の配達員のオートバイが盗まれる事件が4月に4件、5月に2件発生した。昨年は年間を通して2件だったため、急増した形だ。 飲食店で商品を受け取る際や、配達先の住宅に商品を届ける際などに数分間、キーを挿したままにして離れ、盗難被害にあうケースが相次いだという。 県警から注意喚起を要望されたウーバーイーツ運営の「ウーバーイーツジャパン」(東京)は5月末、配達員に向けたニュースレターで「盗難が多発しています。集配時にご注意ください」などとし、特に川崎市内での警戒を呼びかけた。同署は「1~2分の間でも、少しの手間を省かず必ず鍵をかけるようにしてほしい」と指摘する。…