住宅街を歩いていると、時折「うわ……」と思う光景に出くわす。幅ギリギリの路地を、堂々と大型ミニバンやスポーツタイプ多目的車(SUV)が通ろうとしている瞬間だ。乗っている人に悪意はないのだろう。だが、周囲の歩行者や自転車、そして他のクルマにとっては、緊張が走る一瞬になる。狭い道で大きなクルマを見ると、どうしても心理的圧迫を感じるのは、筆者(作田秋介、フリーライター)だけではないだろう。 都市の住宅街の道幅は、意外と限られている。日本の多くの住宅街では、道幅が4m前後、場合によってはそれ以下の路地も珍しくない。そんな場所を、幅1800mmを超える車両が通ろうとする。 向こうからもクルマが来れば、どちらかがバックしなければならない。歩行者や自転車もいる。路肩ギリギリをすり抜けるように運転することで、通行者の心理的距離は自然と広がる。安全に通れるのは確かだが、心理的な負荷は確実に生まれる。ネット上の書き込みを見てみると、 「そんなに路地を通りたいなら、コンパクトカーか軽自動車を買えよ」 「しかも猛スピード」 「日本は5ナンバーサイズ以下じゃないと通れない道だらけなのに」 「混んでてても幹線道路を使え」 「幅寄せも出来ないのに狭い道を通るな」 といったような世知辛い声が寄せられている。 私たちは普段、住宅街の道を生活空間として無意識に共有している。 ・子どもが遊ぶスペース ・近所の人の自転車ルート ・犬の散歩道 など、道路は単なる通行路ではなく、日常生活の一部だ。そこに大型車が入ってくると、生活のリズムが少しずれる。小さな子どもが遊ぶプールやボール遊びのそばをクルマが通ると、親は無意識に緊張する。道路は移動の手段であると同時に、心理的な共有空間でもあるのだ。…