現代、モーターサイクルの価値基準はその速さだけにとどまらない。しかし、かつて「世界最速」を競い合い、性能を進化させてきた華々しい歴史がこの業界にはあった 現代、ストリートにはさまざまな高性能モーターサイクルがあふれているが、それらの中で「世界最速」や「公道最速」、さらには「峠最速」といった刺激的なキャッチコピーに彩られる存在は少なくなった。 これはメーカーの多くが自社の製品に関して、スピードのみをクローズアップし評価されることを決して好んではいないということが遠因にあると思われる。 そこにあるのは、高性能モーターサイクルとはあくまで総合性能でもって評価されるべき大人趣味の乗り物である、という価値判断である。 さらに近年はモーターサイクルの高性能化が進み、こと公道上での使用に関する限り、その動力性能に明確な差が見られなくなったということもあるだろう。 いずれにしても、1980年代から1990年代に掛けての、いわゆるバイクブームの時代と比較すると現代のそれはメーカーのセールストーク自体が大きく様変わりしていることは間違いない。 一方、モーターサイクルがいまだ進化途中にあった1930年代から1940年代、さらに1970年代頃までは、どのようなシチュエーションであれスポーツモーターサイクルを標榜するのであれば「最速であること」が最も重要な評価要素だった。…