元スレ 全てのレス 1:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2021/10/10(日) 01:04:11.19 :akdLeVQoO 「岡部」 「む? なんだ、助手よ」 私、牧瀬紅莉栖は岡部倫太郎の事が好きだ。 「そこ、二歩なんだけど」 「なぬっ!? あっ……!」 何故私が岡部に対して好意を抱いたのかを説明するのは難しい。話せば長くなるし、捉えようによっては荒唐無稽なファンタジーに思えるかも知れない。しかもその根拠が岡部の主観に基づく別の世界線の話となれば、尚更信じることは困難である。それでも、私は。 「盤面全体を俯瞰出来ていない証拠よ。前にも言ったでしょ? 岡部は大局的視点に欠けているって」 「それをこの世界線のお前に言われるのは初めてだがな」 既視感は幻のようで岡部だけが知っている。 「しかし、助手よ。この手の盤上遊戯にはローカル・ルールが付きものでな。我がラボでは二歩は反則ではないのだ」 「そんなゲームの根底を覆すようなローカル・ルールがあってたまるもんですか」 ご覧の通り、岡部は捻くれた男である。 無精髭が生えていて年齢よりも老けて見える冴えない風貌に、よれよれの白衣姿。 学会から見放されて、ロクなスポンサーも得られない貧乏研究者にしか見えない。 しかし彼はまだ学生で近々私が籍を置くヴィクトル・コンドリア大学へ留学することが決まっている。意外とやれば出来る男なのだ。…