元スレ 全てのレス 727:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2018/08/08(水) 22:32:15.25 :lVI6xtOSo 「――って、プロデューサーは言ったよねぇ」 潮風が、気持ちよく頬と鼻をくすぐってくる。 落ち着くはずの海の匂いと景色。 ああ、それなのに……何ということでしょう! 防波堤を歩いてくるキミの、その顔! 「にゃはははは!」 いつも、あたしが何処かへ行く度に見つけてくれる。 そして、ため息をつきながらでも、手を差し伸べてくれる。 そんなプロデューサーに、あたしは甘えていた。 顔も思考も……ううん、似ている所を探す方が面倒なのに、 あたしは、普通の女の子みたいに、父親に甘える気分を味わっていた。 「……」 でも、プロデューサーは――ダッドじゃない。 そんな事はわかりきってるし、誰に言われるまでも無い。 けれど、志希ちゃんは寂しかったのです、グスン! ……な~んて、言ってる場合じゃなさそう。 「ねえ……本気?」 そんなはずは無いと思いたいけど、確かめずにはいられない。 答えはもうすぐ出るけれど、一刻も早く、知りたい。 「あたし、アイドルなんだけどにゃ~?」 可能ならば、回避したい。 ううん、全力で回避すべきだと思うんだよね。 そのためなら、あたしはどんな手でも使う。 ……そう、ちょっと危険なお薬を使ってでも、ね。 「へのつっぱりは、いらんですよ」 言葉の意味はわからないけど、とにかく凄い自信だ。 交渉決裂……う~ん、これは仕方ないかにゃ~。 そう思って、ポケットの中に手を差し入れた瞬間―― 「へっ?」 ――あたしの視界は反転していた。 さっきまで眺めていた水平線は、上下逆さま。 踏みしめていたコンクリートの地面は、遥か遠く――真下にある。 それでさ、嫌でもわかっちゃったんだよね~。 プロデューサーは、あたしを一瞬でキン肉バスターの大勢に持ち込んだ、って。…