1: 昆虫図鑑 ★ 2026/09/07(月) 09:12:09.76 ID:aE6b1XQg 8月は、政治の世界も夏休みで、日本の政治家の多くは地元のイベントに顔を出して、次の選挙に向けて支持者を固めるのが通例である。しかし、野党陣営は忙しい夏であった。2月の衆議院選挙で、当時の最大野党、立憲民主党と、高市早苗首相の登場を機に連立政権から離れた公明党が、新党、中道改革連合を結成した。しかし、獲得議席は49に止まり、選挙前に両党が持っていた議席を100以上減らす大敗となった。 参議院の立憲民主党と公明党の議員集団は、中道には参加しなかった。政党政治の論理からいえば、参議院の両党も中道に参加し、野党第一党の体制を固めるのが筋道である。衆議院選挙の後、衆議院の中道、参議院の立憲、公明の三党は8月末をめどに、1つにまとまる協議を続けてきた。しかし、先月末、参議院の立憲民主党は合流に反対することを明確にした。その結果、日本の国会では、野党が分立し、ガリバー旅行記のガリバーと小人のような状態に陥った。 政党をつくり出すにあたっては、理念、基本政策を共有することが何より重要である。同時に、国会で議員を集めて数を大きくすることも重要である。日本では1990年代から自民党に対抗する野党の側で政党再編の努力が繰り返されてきたが、理念と数の相剋で野党政治家は悩んできた。 今回の三党合流でも、それは繰り返された。立憲民主党は、集団的自衛権反対、原発廃止など、進歩的な政策を主張してきた。長年自民党と連立を組んで、従来の政策を進めてきた公明党とは距離がある。立憲民主党の進歩派議員、地方組織は、この距離感ゆえに合流に反対した。それを最も喜んでいるのは、自民党である。政権の座を脅かすライバルがいないのだから、高市政権はこれからも横暴を続けられる。 私も、政党政治における理念の重要性は否定しない。しかし、今の局面では、理念を具体的な政治行動の中でどのように位置づけるか問われる。政策の純粋な一致を目指せば、共産党のような固い組織政党に行きつく。しかし、それでは幅広い支持者を集めることはできない。ここで必要なのは、理屈をぶつけ合って違いを強調することではなく、政策の方向性を共有することである。 例えば、集団的自衛権行使を認める安保法制をどうするかは、立憲民主党と公明党の違いの象徴となった。公明党はかつての自公連立政権の中で、その成立を進めた。ただし、法案をつくる過程で、無制約な集団的自衛権の行使を認めないよう歯止めをかけ、日本の存在を根本から脅かす存立危機事態において集団的自衛権を行使できるという枠組みをつくった。アメリカのトランプ政権によるイラン攻撃の中で、日本政府にもホルムズ海峡に自衛隊を派遣するよう圧力があった。しかし、現在の同海域の紛争は日本にとっての存立危機事態ではないということは明らかであり、高市政権も自衛隊派遣を断ることができた。 今の日本の政治状況では、安保法制を廃止することは不可能である。最も重要なことは、アメリカが起こす愚かな戦争に加担しないよう自衛隊を制御することである。公明党は、高市の軍事優先の路線、憲法改正への積極的な姿勢に反対して連立を離脱したのであり、戦争に加担しないという現実的な政策判断において、立憲民主党と公明党は一致できるはずである。政策の方向性の共有とは、こういうことである。 日本には野党はたくさんあるが、国民民主党、参政党という中規模な野党は、高市政権の進める政策に賛成する場面も多い。自ら政権を目指すのではなく、自民党に要求をぶつけて、部分的にそれを実現してもらうことを手柄にしている。政権交代をまじめに追求する真の野党が存在しなければ、日本の政治は選挙を伴った全体主義に陥る危険がある。 自民党の政治家は一致点を見つけるのが上手だが、進歩派の政治家は互いの違いを見つけるのが好きだと、昔から言われてきた。今の日本では、そんなのんきなことを言っている場合ではない。三党合流は頓挫しても、政権を目指す政党をつくる努力を諦めてはならない。 山口二郎|法政大学法学科教授…