イギリスのオックスフォード大学に、1840年から止まらずに鳴り続けているベルがある。小さな金属球が0.5秒に一度、左右のベルを交互に叩く。これまでに打った回数はおよそ100億回。動かしているのは同じ時代に作られた電池ひとつで、その中身が何でできているのかは、今も正確には分かっていない。開けて確かめれば分かる。ただし、開けた瞬間にこの実験は終わる。 ※注:ここでいう「電池」は電堆(でんたい)と呼ばれる古い形式のもの。金属の薄い円板と紙を何百層も交互に重ねて筒状に固めたつくりで、液体を使わないものは乾電堆と呼ばれる。いま使われている乾電池とは別物で、電圧は高く取り出せる一方、流せる電流はごくわずかしかない。 今日の知ってた? 🔔 オックスフォード大学クラレンドン研究所の廊下には、1840年に設置されて以来ほぼ鳴り続けている電気ベルがある。2つの真鍮のベルの間で直径4ミリほどの金属球が静電気の力で往復し、1秒に2回、つまり0.5秒に一度ずつベルを打つ。打った回数はこれまでにおよそ100億回。「世界でもっとも長持ちしている電池」としてギネス世界記録にも登録されているが、肝心の電池の中身が何なのかは、いまだに確認されていない。 背景:中身を確かめられない電池 装置の名前は「オックスフォード電気ベル」、あるいは「クラレンドン乾電堆」。オックスフォード大学クラレンドン研究所の玄関ホールのすぐ脇、廊下にガラスケースごと置かれている。装置に貼られたラベルには「1840年設置」とあり、買い入れたのは聖職者であり物理学者でもあったロバート・ウォーカー。実験器具のコレクションを作りはじめた、その最初期の一点だった。 ただし、装置そのものが作られた年ははっきりしない。1825年に製作された可能性を指摘する資料もあり、海外掲示板のスレッドタイトルにあった「1825年」は、おそらくここから来ている。一方で「イタリアの物理学者にして司祭が発明した電池」という部分は、この装置を組み立てた人ではなく、使われている電池の形式を指していると考えるのが自然だ。ひとつの装置の話に、製作年の説と、電池の発明者の話が混ざっている。 その形式は「ザンボーニ電堆」と呼ばれる。考案したのはジュゼッペ・ザンボーニ(1776〜1846)。イタリア・ヴェローナのカトリック司祭であり、同時に物理学の教授でもあった人物で、乾いた電池についての最初の論文を1812年にヴェローナで発表している。銀箔と亜鉛箔と紙を交互に何百層も積み重ねて筒に固めた構造で、液体をいっさい使わない。ちなみに彼は1814年に、この電堆で動く時計も作っている。 やっかいなのは、オックスフォードのベルに入っている電堆が本当にザンボーニ電堆なのかを、誰も確かめていないという点である。分かっているのは、絶縁のために溶かした硫黄で外側をすっかり覆ってあることくらい。中身については「ザンボーニ電堆ではないか」と考えられているだけで、断定できる者はいない。掲示板でいちばん上に来ていたコメントも、「この話でザンボーニの名前を落とすのは失礼だ」という指摘だった。 もう少し詳しく 鳴り続けている理由は、電池が強いからではない。仕組みはこうだ。2つの真鍮のベルにそれぞれ電堆がつながっていて、その間に直径4ミリほどの金属球が吊るされている。球は片方の電堆に静電気で引き寄せられ、ベルに触れた瞬間に同じ符号の電荷を受け取り、今度は反発して弾き飛ばされる。飛んだ先でまた同じことが起きる。これを毎秒2回、186年間くり返してきた。1回鳴らすのに流れる電流は約1ナノアンペア、つまり10億分の1アンペア程度とされる。強い電池なのではなく、ほとんど電気を使わない仕組みのほうが本体なのだ。 音は、実は聞こえない。ガラス2枚に隔てられているため、廊下を歩いていても鳴っている音は届かない。0.5秒に一度きちんと打っているのに、その音を聞いた人はほとんどいない、という妙な状態が続いている。 終わり方も予想がついている。この装置を調べた研究者の見立てでは、電堆の電気が尽きるより先に、叩き続けている金属球のほうが摩耗して止まる可能性が高いという。つまり「電池が切れて終わり」ではなく「球がすり減って終わり」になるかもしれない。どちらにせよ、中身を確かめるには封を開けるしかなく、開けたその瞬間に世界記録の更新は止まる。だから誰も開けない。186年ぶんの答え合わせが、そこで宙づりになっている。 海外の反応 1. 海外の名無しさん この話でザンボーニの名前を落とすのは、さすがに失礼だと思う。乾いた電池を最初にまとめ上げた人で、しかも本業は司祭。肩書きの並びだけで記事が一本書けるような人物なのに。 2. 海外の名無しさん(>>1への返信) ザンボーニと聞いて、アイスホッケーのリンクをならして回るあの整氷車を思い浮かべた。電池と整氷車を同じ人が発明していたなら、人生を2回分生きたことになる。 3. 海外の名無しさん(>>2への返信) 残念ながら別人です。整氷車のほうはフランク・ザンボニーというアメリカの発明家で、20世紀に入ってからの仕事。名字が同じだけで、100年以上離れている。 4. 海外の名無しさん 消費電流が1ナノアンペアというのが本当なら、単三電池(2500mAh想定)で動かした場合、計算上は25億時間、ざっと28万年もつことになる。桁のどこかがおかしい気がしてくる。 5. 海外の名無しさん(>>4への返信) うちの単三は引き出しの中で16年目に液漏れしていた。28万年もつ電池を作れる世界のはずなのに、なぜ我が家のリモコンには2年で切れるやつが入っているんだ。 6. 海外の名無しさん(>>4への返信) 記事をもう一度読んでほしい。1ナノアンペアは「1回鳴らすごと」の値で、しかも周波数が2ヘルツ。1分間に120回、1時間で7200回ぶん流れる計算になる。それだと単三電池でも40年ほどで尽きる。おまけに単三は置いておくだけで年に数パーセント抜けていく。それでも十分すごいけど、28万年ではない。 7. 海外の名無しさん 前に同じ話題が出たとき、誰かがこの電池の出した電力の総量を計算していて、およそ3ワット時という数字だった。手元のスマホの電池が18.5ワット時なので、200年かけてスマホ3時間ぶん、ということになる。 8. 海外の名無しさん(>>7への返信) 面白いのは出力の小ささではなくて寿命のほうだと思う。どんな装置であれ200年動き続けているという時点で、電気の話とは別のところで異常なんだよ。 9. 海外の名無しさん(>>8への返信) まったくそのとおりで、200年あればただの岩だってひび割れる。岩は動かないし全部石でできているのに、だ。可動部を抱えて毎秒2回動きながら同じ年月を越えているほうが、よほど不自然な話である。 10. 海外の名無しさん 見た目のせいで振り子だと思われがちだけど、あれは重りが揺れているのではない。金属球が片方の電堆に静電気で引き寄せられ、触れた瞬間に同じ符号の電荷をもらって弾き返される、それを延々くり返しているだけ。運んでいる電荷そのものは笑ってしまうほど少ない。 11. 海外の名無しさん(>>10への返信) てっきり真空の容器に入れて摩擦を減らしているんだと思い込んでいた。ガラスが2枚あるのは音と埃を止めるためで、真空にしているという説明は特に見当たらないんだな。 12. 海外の名無しさん 仕組みも気になるけれど、自分が引っかかっているのはそこじゃない。0.5秒に一度、何年も鳴り続けるベルを、いったい誰が欲しがったのかという点だ。 13. 海外の名無しさん(>>12への返信) たぶん自分の執務室には置かなかったから続いている。廊下に置いたからこそ186年もったのであって、机の真横だったら1週間以内に誰かが止めていたと思う。 14. 海外の名無しさん(>>12への返信) しかもガラス2枚に阻まれて、実際にはほとんど音が聞こえないらしい。つまり疑問はこう更新される。「誰にも聞こえないベルを、0.5秒に一度、何年も鳴らし続けたい人とは何者なのか」 15. 海外の名無しさん 中を開けて確かめたい研究者は当然いるはずなのに、開けた瞬間に記録が終わってしまうので誰も手を出せていない。知りたい気持ちと壊したくない気持ちが真正面からぶつかっている装置、というのが一番おいしいところだと思う。 16. 海外の名無しさん 「失われた超技術」みたいな扱いをされがちだけど、そういう話ではない。同じものは今でも作れる。ただ、現代の機械が必要とする電力はこれより桁違いに大きいので、この方式では何の役にも立たないというだけの話だ。 17. 海外の名無しさん そもそも19世紀の技術を、当時より仕組みを理解している我々が再現できない道理がない。分からないのは「作り方」ではなく「この個体の中身」であって、そこは全然別の問題なんだよな。 18. 海外の名無しさん 使い切りのリチウム電池なら数十年動くものが実際にあるので、長寿命そのものは今でも可能。ただ液体を使う電池で100年越えはさすがに無理筋で、保存性のいいものでも年に1パーセント前後は自然に抜けていく。 19. 海外の名無しさん 使っていないのに電池が減るのはなぜか、という話でいうと、正極と負極を隔てている膜を電荷が少しずつ漏れていくのが主な原因。理想の膜はイオンだけ通して電子は一切通さないものだけど、現実の膜はそこまで完璧にはできていない。 20. 海外の名無しさん 電堆を考えた人が司祭で、オックスフォードでこれを買った人も聖職者で物理学者、という並びがなんだかいい。この時代のヨーロッパでは、教会の職と学問の職が今よりずっと近い場所にあったんだよな。 21. 海外の名無しさん 廊下の隅で186年、0.5秒に一度ずつ鳴り続けているという事実だけで、なんだか落ち着かない気持ちになる。自分が生まれる前からずっと鳴っていて、いなくなった後もたぶん鳴っている。 22. 海外の名無しさん 世界一しつこい目覚まし時計の話かと思った。悪いけど、あと5分だけスヌーズさせてほしい。 23. 海外の名無しさん(>>22への返信) 5分のスヌーズは短すぎて拷問だと思っている。自分は12分に設定して、そのぶん早めに鳴るようにしてある。必ず1回押す前提で組んでおくと、起きるときの罪悪感がない。 24. 海外の名無しさん 100年以上ついたままの電球の話と同じで、異様に長持ちしているものはたいてい性能のほうを削っている。あの電球もろうそく半分くらいの明るさしかない。フィラメントを明るく光らせようとすれば、その分だけ確実に寿命は縮む。 まとめ 1840年に廊下へ置かれたベルが、およそ100億回打ちながら今も鳴り続けている。中の電堆はザンボーニ電堆だろうと推定されているだけで、確かめれば実験そのものが終わるため誰も開けられない。コメント欄は「単三電池なら28万年もつ計算になる」という試算から始まり、すぐに「1回鳴らすごとの値だから40年程度だ」という訂正が入って落ち着いた。そこから仕組みの解説、失われた超技術ではないという冷静な指摘へと流れ、最後は「誰にも聞こえないベルを鳴らし続けたかった人とは何者なのか」という素朴な疑問に戻っていった。 元ソース: 1825年にイタリアの物理学者にして司祭が発明した電池が、今もベルを鳴らし続けていて、まだ切れていない The post 「1840年から0.5秒に一度、打った回数はおよそ100億回」オックスフォードの廊下で鳴り続けるベル、電池の中身が今も分からない appeared first on みんな知ってた?【海外の反応】.…