
ホンダの研究開発子会社である本田技術研究所(Honda R&D)は、米カリフォルニア州の電池技術企業QuantumScapeと、全固体電池セルの開発・製造に向けた複数年の共同研究契約を結んだ。ホンダは今年、EV戦略を相次いで縮小したばかり。それでも研究開発部門は、次世代電池のブレークスルーに賭ける姿勢を崩していない。 契約は、ホンダがQuantumScapeの技術を実際に評価したうえで結ばれた。全固体電池の開発を進めるQuantumScapeにとって、有力自動車メーカーからの重要な「信任」となる。 なぜ全固体電池なのか 全固体電池は、次世代の蓄電技術の中でも特に有望視されている。現行のリチウムイオン電池に比べ、EVの航続距離を延ばし、充電を速め、安全性も高められるとされる。用途はEVにとどまらない。AIデータセンターや航空機、防衛システムの電源としての活用も見込まれている。 ただし、全固体電池をめぐる主張がすべて額面通りに受け止められているわけではない。今年初めには、フィンランドのスタートアップDonut Labが「世界初の量産対応の全固体電池」をうたって注目を集めた。だが、バッテリー研究者でYouTubeに「Ziroth」名義で投稿するライアン・イニス・ヒューズ氏はこの主張に疑問を呈した。同社が示唆していたナトリウムイオンの全固体設計ではなく、従来型のリチウムイオン化学を使っているとみられる、というのだ。 対照的に、QuantumScapeの技術にはより確かな裏づけがあるようだ。同社はすでに独Volkswagen Group傘下のバッテリー企業PowerCo SEへ技術をライセンス供与しており、これが自動車業界との初の本格的な提携となっていた。今回のホンダによる評価と研究契約は、その技術が厳しい検証に耐えていることを改めて印象づける。 「評価の過程で、QuantumScapeの技術は説得力のある独自の強みを示した」。本田技術研究所で最高執行責任者(COO)を務める小川厚氏は、発表に合わせたコメントでこう述べた。「自動車をはじめ幅広い用途で価値を生む可能性があるとみている。提携を次の段階へ進められることを楽しみにしている」 今回の契約は、全固体電池が市販車に届く未来へ向けた大きな一歩だ。QuantumScapeは今年、シリコンバレーの本社にパイロット施設「Eagle Line」を開設した。ここでパートナー企業の評価用に「QSE-5」のサンプルを生産し、量産化に向けた「設計図」と位置づける。ホンダのような顧客が技術のライセンス契約に踏み切る前の段階にあたる。 ホンダの電動化戦略の全体像 契約のタイミングには意外感が漂う。ホンダは今年、北米で進めてきた複数の目玉EV計画を相次いで縮小した。「0シリーズ」の「サルーン」やSUVのコンセプト、アキュラ「RSX」、そしてソニー・ホンダモビリティと共同で手がける「AFEELA」などがその対象だ。 ホンダは足元のEV目標も引き下げている。EVやソフトウェアへの投資を圧縮し、2030年のグローバルEV販売比率の目標を約20%へ下方修正した。 ホンダの担当者は、米CNETのコメント要請に即座には応じなかった。…