だから私が家を出るときにしきりに「本当は映画館も美術館も、レストラン行きたくなかった、家に居たかった」「お金を無駄遣いする君を正そうと思った」等々述べていた。そもそもそういう人間が嫌ならばお付き合いの段階で断るべきであったが、前述の通り彼は「どんなあんぽんたんでもたちまちヒョイっと良妻賢母」を心の底から信じていて、なおかつそれが当たり前だと思っていたので私になにか言うこともできなかったのだと思う。だがこちらもパッパラパーさでは負けておらず、何も気が付かずにのほほんと三年間、やれ映画だやれ美術館だ、誘い合わせて歩き回っていたので彼の思惑にまったく気が付かなかった。家事はやっていた。完全に気が付かなかった。「じゃあ最初から良妻賢母になりそうな、そういう女の子を探せばよかったじゃないの」「それだけの子は面白味がないから駄目だ」あちらを立てればこちらが立たず、伴侶選びというものはげに難しきかな、だとつくづく感じた。また、彼を微塵に幸せにできていなかったことを後悔している。次にご縁があれば、人をひとりキッチリ幸せにしたいと思う。…