全てのレス元スレ 2:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2017/06/08(木) 23:26:11.68 :iYcy3Tcr0 私は、アイドルをクビになった。 心情としてはそう表現したいところだが、言うとなると少しの語弊が残る。 より事実に即するならば、私はアイドル候補生として見切りをつけられ、以後のアイドルとしての活動は諦めることになったというのが正しい。 候補生、もしくは研修生として芸能事務所に迎え入れられてから一年足らずでのできごとだった。 正直、覚悟はしていた。 自分の見た目に大した自信があったわけでもなければ、歌も普通、ダンスもイマイチ。オーディションに通ったのが我ながら意外なほどだ。その上、練習を重ねても思うようには上達の兆しが見えないときた。 会社の判断は妥当なんだろう。そこまで大きな事務所じゃない。モノになるか怪しい人間をいつまでも囲ってはいられないのは当然だ。 理解はできる。 ……だけど、悔しかった。 口惜しくて、諦めきれなくて、その日は一筋流れた涙が枕を濡らした。 どこで知ったのか忘れたが、血と涙の成分はほとんど同じらしい。 人並み以上にケガをする機会は多くて、たぶん人よりも血は流してきた。 それでも、それまでの人生で流した血の総量分の痛みよりも、その日の涙一滴分の胸の痛みの方がきっと強かったと思う。 誰かを笑顔にする仕事がしたい。 思いたったらすぐに行動してしまう性格で、通っていた高校を衝動的に辞めてアイドルを志した。 本気だった。 心の底からなりたいと思ったんだ。 でも、なれなかった。 「…………ちくしょぉ……」 暗くて何も見えない部屋で小さく呟いた独り言は、闇の中に溶けて消えていった。…