全てのレス元スレ 2: ◆U.8lOt6xMsuG:2020/03/16(月) 01:30:53.78 :faqEAmx60 「今度、結婚することになってさ」 そいつの口から放たれた言葉を、私は――白雪千夜は、咀嚼するのに時間がかかった お嬢様と別々になる仕事も最近は増え、こいつに頼ることも多くなってきた。信頼はともかく、芸能プロデューサーとしてのこいつは信用していた 実際、自分がアイドル以前の自分と変わってきたのを実感する。自分の思考回路に新しい選択肢が増えたというか。自分の考え方に幅が出来た。美術作品に感銘を受け価値観が変わるように、私はこいつの手腕によってこれまでとは違う人間になれたのだ 「で、彼女のご両親に挨拶しに行くことになったんだけど……どんな格好が良いかな、カジュアルなのかフォーマルなのか」 そんな、私を変えたこいつは、勝手に他の女のものになろうとしている。胸の奥から吐瀉物がこみ上げるような不快感が、息苦しくなるようにぎゅっと掴まれる感触と共にやってくる それらはこいつへの怒りへと変わっていった 「……別に、彼女と相談すれば良いのでは? 高校生に尋ねるよりも、お前には彼女がいるのだから。その彼女が、妄想じゃなければだが」 「妄想じゃないって……ほら、待ち受けにしてるけど」 舌に乗る言葉が重い。目に入った女の写真に憎しみを覚える。惚気るようなセリフは、遠くで響いて耳に入りにくい。 徹夜した時のように胸が静かに高鳴る。体中を黒い血液が回るようだ。鼻で息を吸い、二秒ほど肺で溜めてから、吐き出した ノロケ続ける男を睨む。殺意に近い感情と、泣きたくなるほどの寂しさが同時に私へ訪れた…