全てのレス元スレ 2:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2017/11/06(月) 20:05:38.82 :1bqYoAB70 浮気調査、動物探し、盗聴器ハント、簡易的な身辺保護。 平々凡々な探偵業をこなしていると、しがない依頼しか大抵は来ないものだ。 自分の掲げていた理想のハードボイルドと呼ぶには程遠い。 まだサラリーマン時代の方が楽だったのかもしれないとまで思っている。 霞でメシを食わないと仏様になってしまうような日々を過ごしていた。 だからこそ、今日の依頼人が提示してきた仕事には度肝を抜かれてしまう。 「マフィア殲滅のために情報収集を依頼したい。 報酬は貴方が会社員を続けていた頃を基盤とした生涯年収分で如何ですか」 内容から察して詳細なんか聞かずとも、超弩級にきな臭い案件以外の何物でもないじゃないか。 それにこんな赤貧探偵に頼むなんて、どう考えても鉄砲玉のようにしか扱われないに決まってる。 即々でノーと返事を出してお引き取り願おう。 頭じゃ理解していても、心に宿る愚かな自分が吠え猛るのだ。 これこそがハードボイルドの真骨頂だろう、と。 震える指先を誤魔化すように煙草に火を点け、大きく吸い込み、溜め息のように煙を吐き出す。 「その仕事、請け負いましょう」 退路は断った。 後は野と成れ山と成れ、だ。 …