元スレ 全てのレス 1:はみがき:2019/02/10(日) 11:36:04.96 :eA0evHgOO ど新人です。死にたくても死ねない女の子と、優しい死神の死への旅路のお話です。 よろしくお願いします 2:はみがき:2019/02/10(日) 11:38:22.32 :eA0evHgOO 失敗した。 ロープをほどきながらいつものように唇を噛みしめる。もう何度目だろう。死にたくないと叫ぶのは理性なのか本能なのか。それがわかったらきっと、ここではない何処かへ征ける気がした。 眠れない夜を誠実に過ごす事に耐えきれなくなった私は、アコースティック・ギターを背負って外に出た。肌に纏わり付く湿気に季節の移ろいを感じ、それとほぼ同時に、命が抱える底無しの虚しさに襲われる。 月がぽっかりと浮かぶ防波堤の上。群青色の夜空に錐で穿ったような星々がどこか寂しげに瞬く。 それはどうしようもなく当たり前なんだと思う。 君たちは互いに、途方もなく離れているんだから。もし星が恋をするのなら、それはすべからく、気が遠くなるほどにロマンチックなんだと思う。 堤防に腰をおろしてぼんやりと空を眺めると、なんだか暴力的な月光が、気高く瞬くリゲルさえも霞ませていた。 だからと言って満月が嫌いなわけじゃない。 ……暗がりはきっと大切なもので溢れてる。 夜にしか照らせない何かだってあるかもしれない。 だから彼は、夜を徘徊する私にとって唯一の友だちだ。月が私のことをどう思っているのかなんて知る由もないけれど。 バチン、と指先に痛みが走った。ギターの弦が切れてしまったのだ。潮風を浴びて、ずいぶんと劣化していたのかもしれない。 「…………なんだ、もう終わりなの…?」 いきなり背後から声がするものだから、驚きできゅっと身体が縮こまる。ゆっくりと振り返る。……誰もいない。 背中に氷でも入れられたような感覚に陥って、私はくらりと倒れそうになる。海に落ちるのをなんとか踏みとどまり、深く深く呼吸をした。 「ごめんごめん……まさかそこまで驚くなんて思わなくて。本当にごめんよ」 「……え…?」 そこには女性がいた。夜に溶け込む黒装束を着た、なんの変哲もない女性。 …………海面に立っていること以外は。 ……20代後半辺りだろうか? 大学生にしては大人びて見えるし、社会人にしては浮かべる笑みが無邪気だ。 茶色みがかった髪の毛が月の明かりで朝日みたいに煌めいている。 「お詫びと言っちゃなんだけど……お願いを1つ、訊いてあげるよ」 ようやく落ち着きを取り戻した私は、まだ少しだけ震える声で尋ねる。 「なんでも……ですか…?」 「うん、なんでも」 「じゃあ…………」 月を背にして私は告げた。今この時だけは、なんだか世界が静止して思えた。 「私を、ころしてください」 そう言い切ると、世界はようやくゆっくりと色を取り戻し、わたしを軸に廻り始めた。 ……いいや、私と“彼女”を軸に。 そう、これは私と“あなた”のお話なんだ。…