690 ピアノの怪談 sage 2006/01/19(木) 02:26:04 ID:D7U6sTau0私が高校生だった頃の思い出話です。私の通っていた高校は、全寮制の、歴史ある学校でした。県下で一の伝統を誇り、建物は古く、先生方の頭も古く、指導の厳しいところでした。生徒の自主性といった今流行りの考えとは縁遠く、何事にも増して伝統とそれに支えられた校風の維持を重視する環境だったのです。そんな中で生徒たちは、先生方の言動に怯えながら、抑圧された日々を過ごしていました。おしゃれも禁止、外出も行き先を言って許可を求めなければいけません。私たちが校内で楽しめる娯楽と言えば、ただ会話をするくらいでした。私たちはただひたすら本を読み、先生方のチェックがやや緩かった雑誌などから情報を得て、いかに互いにとって面白い話をするかに腐心していました。そんな私たちの会話の中によく出る話題の一つに、「怪談」がありました。抑えつけられ閉じられた学校生活の中で、怪談から得られる恐怖は何にも変えがたい刺激でした。放課後の夕闇に包まれる教室で、あるいは夕食後他に人のいない談話室で、私と友人たちは、互いに持ち寄った怖い話をしたものでした。私たちの学校はさすがに古いだけはあって、七不思議系の怪談が七つじゃきかないほどにありました。他の学校にもあるような話が多くて、この手の怖い話は本当に何も話すことが無くなった時に、場を繋ぐ話題として出されるくらいでした。…