1 : 刑務所ではもちろんギャンブルはご法度だが、はいそうですか、と律儀に守る人間なんかいない。 皆、気が遠くなるような懲役期間をしのぐ最高の遊びとして、賭け事に熱狂している。 自分がトミノアイランドにいたとき、フルカワって名前の日系人が新たな懲役として入ってきた。プリズンには世界中の人種、国籍の囚人が存在したが、日本人はめったに来ない。必然的に自分が世話することになった。 ところがこいつがだらしないヤツで、入所してすぐにギャンブルにハマった。トミノアイランドでの賭け事は、現金の代わりに「ベネジェリーアイス」がチップとして使われていた。 日本でも「ベン & ジェリー」ってブランド名で売られてる高級アイスだ。 当時280円ほどだったこのアイスを、フルカワは1万個分も負けた。つまり280万円だ。アイス1個の負けから熱くなり、気が付けば払い切れない金額の負債を背負っていた。 フルカワに300万円近い借金を背負わせたギャングたちは、「支払えないんなら見せしめに殺そうか」って勢いだった。連中にしても、これだけの金額を踏み倒されたらメンツが立たないし、他の囚人たちからもナメられて借金を踏み倒されることになる。フルカワを殺す以外、解決方法はなかった。 「助けてください。何とかお金を工面してください!」 殺されると分かったフルカワは、半狂乱になって自分にすがりついてきた。自分はまずPCと呼ばれる保護対象囚人としてフルカワを独居房に入れてもらうよう、お巡りに掛け合った。次に日本に連絡を取り、舎弟たちに280万円を用意させ、博打の胴元のギャングに支払った。 赤の他人のために用立てるには高い金だったが、同じ日本人が殺される姿を見るよりはマシだった。 これで殺される心配はなくなったフルカワだが、自分はあとでやっかいなことを知った。一度でもPCとしてお巡りに保護を求めた囚人は、そのあとどこの刑務所に移送されても、「こいつはPCだ!」と知れ渡ってしまうという。 こうなったら、もうアメリカの刑務所ではまともに生きていけない。お巡りに守ってもらった「オカマ野郎」として、強制的に荒くれ囚人たちのホモ売春婦にさせられる。 個人の意志なんて関係ない。どんなに嫌がろうが、代わる代わる尻の穴を貸すハメになるのだ。 独居房から出て他の刑務所に移送されたフルカワだが、それからどうなったかは知らない。無事に懲役を終えた可能性は限りなくゼロに近いだろう。 2 : 命を削って掛けるとかギャンカスならアドレナリン出まくりやろな…