ガソリン代が高騰しているが、政府は減税どころかトリガー条項を発動しない。補助金でごまかそうとするその姿勢を運送業界の人間はどう見ているのか。ルポ作家の日野百草氏が限界をむかえている国民生活の様子を伝える。 しかし岸田首相は決してガソリン「減税」を口にしない。それどころか鈴木俊一財務大臣はガソリンの平均小売価格が一定の水準を超えた場合に発動する軽減策「トリガー条項」の発動すら否定した。 自身の親族もガソリンスタンドを経営する北関東の地方議員の話。 「財務省が怖いから誰もガソリン税に手は出せない。一度決めた税は手放したくない、国庫の潤うことが第一、それが財務省ですから」 国民であるユーザーの自賠責保険から6000億円を借りたまま返さないどころか、現在の返済状況では完済するまで23世紀までかかる状態を平気で続ける財務省なら「さもありなん」だが、このままガソリンの減税もトリガー条項の発動すら見送って、ただ補助金を元売り各社に垂れ流すことは本当にガソリン価格の抑制につながるかどうか。 政府の見通しでは補助金の延長と拡大によって9月末には180円、10月末には175円まで下がるとしている。9月13日には実際に18週ぶりの値下がりとなったが、現場とするなら減税はもちろん、トリガー条項の発動が無ければ高いままであることには変わりがない。 そもそも3ヶ月連続で160円なら発動、という約束はどうしたのか。産油国の原油市場における出方次第、円安次第といった面もあるが、それも加味しての政策とするなら疑問しかない。さっそく、見通しの甘さを指摘する識者の意見も出始めている。 地域や施設によってはすでに200円を超えたところも現れた。このままでは本稿で取り上げた運輸関連はもちろん農業や水産業、工場や倉庫などありとあらゆる産業に影響が出る。 減税もしなければトリガー条項の発動もない。鈴木財務相はその理由について「買い控え」が心配と発言したが、心配せずとも現場は買い控えなどしている余裕はないように思う。岸田内閣はガソリンの高騰に苦しむ人々の生活を、現場を知っているのだろうか。…