[ 1 ] ★ バカほど「タバコは絶対ダメ」と言いたがる…和田秀樹「本質を見抜ける人、そうでない人の決定的な差」 賢く元気に暮らす人の共通点は何か。医師の和田秀樹さんは「頭がいい人は、何事もデータに基づいて合理的かつ柔軟に判断する。例えば、肺がんを減らすために、タバコや受動喫煙を槍玉にあげるのは、頭が悪い人の考え方だ。それよりも腺がんの発症要因と思われる自動車の排ガスが減る方法を考えたほうが実効性が高い」という――。 「頭がいい人」が、ものごとを広く俯瞰的に捉えることができるのに対して、「頭が悪い人」は一元的に捉えてしまいがちです。 たとえば、タバコは健康に悪いので、がんになると思えば徹底的に排除します。もちろん、日本人全員が「頭が悪い人」だとは思っていませんが、タバコと喫煙する人たちに対する厳しさは、タバコを吸わない私から見ても少し気の毒になるほどです。 その一例が、受動喫煙の害が叫ばれたことがきっかけとなって、2020年4月1日に改正健康増進法が全面施行され、世の中の多くの場所(飲食店、会社などの事務所、娯楽施設、体育施設、宿泊施設など)が原則禁煙になったことです。 施行当初はそれなりに設置されていた喫煙所も、コロナ禍を機にどんどん閉鎖されました。タバコが体に害を与えることは明らかですが、受動喫煙まで極端に危険なものとして扱うというのは、いささかバランスを欠いています。 というのも、喫煙率は以前の3分の1に下がっているのに、肺がんはむしろ増えているからです。かつて日本人の肺がんは、ほとんどが扁平上皮がんでしたが、喫煙率が下がってから、およそ10~15年後に扁平上皮がんは減っています。いまは扁平上皮がんが3割ほどで、6割くらいが腺がんです。 両者は、顕微鏡で見たときの組織型で区別されますが、部位でいえば、一般的に扁平上皮がんは太い気管支に発生します。肺のなかでも、入口(つまり、口や鼻)から近い部位にできるがんといえます。一方の腺がんは、肺の奥に発生するケースが多いのが特徴です。 おそらく原因物質として、粒子の大きいものが気管支で引っかかって扁平上皮がんとなり、粒子の小さいものが肺の奥まで運ばれて腺がんを引き起こしていると考えられます。 扁平上皮がんの発症要因のほとんどはタバコとされています。ヘビースモーカーに多かったのですが、喫煙率の低下とともに、減少する傾向が表れています。これに対し、腺がんの発症要因は、おそらく粒子の小さな大気汚染でしょう。 工場からの煤煙などは、以前よりずっときれいになっています。中国の経済発展とともに大陸からPM2.5と呼ばれる微粒子が飛んでくるようになりましたが、身近なところで考えられるのは、やはり自動車の排ガスだと思います。 走行している車の数が増えているとは思えませんが、道路工事によって、東京都内や都市部にかぎらず、各地にひどい渋滞が起きています。景気が悪いから道路工事が増えているというのなら、渋滞の起こらない時間帯に工事をすべきでしょう。 さらに道路工事いかんに関わらず、車が渋滞する場所はたいてい決まっているものです。渋滞する場所については、信号機のパターンを支えるなど、工夫の余地があるでしょう。常時、左折が可能な交差点がもっと増えてもいいはずです。 受動喫煙の原因をつくっている喫煙者に対し、これだけ厳しい対応をするのであれば、道路工事のときに渋滞が起こらない時間帯を指定するとか、信号機のパターンを工夫するなどして渋滞の回避を義務づけるとか、排ガスを減らすための柔軟で総合的な施策を打ち出すべきだと考えます。 つまり、タバコをこてんぱんに叩きのめして、扁平上皮がんの減少という一定の成果が出たいま、さらに肺がんを減らそうとするならば、受動喫煙を槍玉にあげるより、自動車の排ガスが減る方法を考えたほうが実効性が高いはずです。 個人の健康法であれ、行政や政治上の事案であれ、データに基づいて合理的かつ柔軟に判断することは、当たり前のようでいて苦手とする人は案外多いのです。 こうした思考ができるかどうかにも、「頭がいい人」と「頭が悪い人」の違いが表れます。(抜粋)…