【酒・コーヒー・タバコは立派な薬物】薬物依存に詳しい松本俊彦精神科医/脳に悪影響のアルコール/カフェインとりすぎで心停止も 薬物の定義と「ビッグ3」の特徴 薬物の定義: 薬物とは、脳に影響を与え、気分や意欲を変化させる「精神作用物質」の総称。覚醒剤やヘロインだけでなく、アルコール、カフェイン、ニコチンも薬物に含まれる。 ビッグ3とは: アルコール、カフェイン、ニコチンは、人類に健康被害を与えつつも広く親しまれている薬物。違法薬物(オピオイド、覚醒剤、大麻=リトル3)よりも深刻な問題を引き起こしている。 合法・違法の区別: 医学的には明確な基準はなく、歴史や文化的な背景で決まる。身近で慣れ親しんだものは合法化されやすく、危険性が高くても社会的に容認される傾向がある。2. ビッグ3の作用と問題点アルコール 健康被害: 全ての薬物の中で最も身体に有害。特に肝臓、膵臓、食道、脳に影響。MRIで確認される脳のダメージはアルコールが最も顕著。 社会問題: 飲酒運転、ドメスティックバイオレンス、児童虐待など、他者への迷惑行為や暴力と最も関連。ストロング系飲料(高アルコール度数、安価、飲みやすい)は特に若者や女性の依存を助長。 依存と量: 依存症でなくても多量飲酒(日本酒換算で1日3合以上、純アルコール60g以上)が問題。WHOは少量でも有害と指摘。低リスクは1日1合未満。 歴史的背景: アルコールはキリスト教文化(ワイン=イエスの血)や殺菌作用で安全な水分補給源として人類の発展に寄与。コミュニティ形成や団結にも役立ったが、産業革命時の過酷な労働環境で鎮痛剤代わりに乱用され、社会問題化した。 日本の課題: 日本は酔っ払いへの寛容さが特徴だが、グローバル化に伴い、路上飲酒や24時間販売の規制が必要との意見。カフェイン 作用: アッパー系薬物で、眠気や疲労感をブロック(アデノシンを抑制)。睡眠欲や食欲を抑える不自然な薬物だが、覚醒作用で知的活動を促進。 歴史的背景: アフリカ発祥で、イスラム圏を経て17世紀にヨーロッパへ。コーヒーハウスが産業革命、フランス革命、資本主義、学術の発展を後押し(例:ロンドンのペニー大学)。 健康被害と依存: 依存性は明確で、朝のコーヒーが美味しく感じるのは離脱症状の緩和による。過剰摂取(500mg以上)でパニック発作や心停止のリスク。エナジードリンクやカフェイン錠剤は特に危険。 問題点: 若者のエナジードリンク乱用が急増。疲労物質(アデノシン)が蓄積し、休日にグロッキー状態に。持続可能な生活には適度な休みとシラフでの作業が推奨。ニコチン(タバコ) 作用: 摂取法によりアッパー系(血圧・心拍数上昇)またはダウナー系(リラックス効果)に。依存性が非常に強く、喫煙者の30%が依存症に(アルコール14%、大麻9%)。 健康被害: タールによる呼吸器疾患、ニコチンによる心血管疾患、虫歯リスク。依存性が最大の問題。 歴史的背景: アメリカ大陸原産で、宗教儀式や医薬品として使用。コロンブスによりヨーロッパへ広まり、100年で世界中に。国家もタバコ税に依存し、規制が困難に。 社会的影響: 昭和の日本では喫煙率が高く(男性8割)、現在は禁煙が進むが、喫煙者の居場所が減少。加熱式タバコはタールの害を軽減するが、ニコチン依存は変わらず。 課題: 喫煙者を排除するのではなく、迷惑をかけない形で共存する配慮が必要。結論: 薬物はコミュニティや文化を形成する一方で、過剰使用は個人や社会に害を及ぼす。量を意識し、依存の背景にある人間の問題に向き合い、支援を強化することで、ビッグ3と健全な関係を築くべきである。…