元スレ 全てのレス 2: ◆bwwrQCbtp.:2016/04/05(火) 23:42:46.22 :slrcx/r90 今井加奈には、”おばあちゃん”がいた。 両親のその両親も健在で、父方、母方ともに、おじいちゃんもおばあちゃんもいたのだが、もう一人、父の祖母、加奈にとっては、ひいおばあちゃんにあたる人がいた。 当時、父方の祖父母は、つい先年リタイアした祖父が町に出て仕事していたこともあり、町の郊外に家を構えていた。そこに長男夫婦である加奈の父母も、一人娘の加奈と共に同居している。 ”おばあちゃん”の家は、町の郊外の加奈の家から、車で一時間ほど行った山あいにあった。 祖父にとっての実家にあたるその家は、祖父が町に就職に出た頃と変わらない、古い農家であった。 「おばあちゃん!」 幼い加奈は、ひいおばあちゃんのことをそう呼んだ。 父母がおばあちゃんと言うのだから、加奈にしてみれば極めて自然な呼び方である。 「おお、加奈、よく来たね。」 「えへへ。きょうは、おじいちゃんもうちのおばあちゃんも、パパもママもみんなきたんだよ!」 ”おばあちゃん”は、今井の家に七十年ぶりに産まれた女の子を、大層可愛がった。祖父の姉、今は亡き加奈の大叔母にあたる人以来、七十年。加奈の祖父、そしてその子は二人とも男の子で、三代にわたって待ち焦がれた女の子が、加奈であった。 三月三日、桃の節句の日に産まれた加奈のことを、この日に産まれたから女の子になってくれたと喜んだ。 そのおばあちゃんに、加奈もよく懐いていて、おばあちゃんの家に行くことを喜び、行きたがった。 そんな可愛い可愛い孫娘の願いのために、祖父は仕事の忙しい加奈の父の代わりに、毎週のように車を走らせては実家に連れていくのであった。…