1: 朝一から閉店までφ ★ 2026/07/27(月) 22:12:53.43 ID:NdfRRmtf 2026/07/27 7:00 PRESIDENT Online 大熊 杜夫 辺境リポーター、ライター 北朝鮮は日本にも引けを取らないビール大国だという。辺境リポーターの大熊杜夫さんは「英国直伝の本格的な醸造スタイルで多種多様なビールを作っている。その味わいは驚くほど素晴らしい」という――。 「隠れビール大国」である北朝鮮 「北朝鮮製」と聞くと、読者の多くは制裁下にある貧しい国の時代遅れの粗悪品を思い浮かべるかもしれない。しかし、少なくとも北朝鮮は我々の想像を遥かに超える素晴らしい製品を製造している。それは「ビール」だ。 キリンビールの調査によると、日本は世界で11番目にビールを消費(年間1人当たり34.5L)する有数のビール愛好国だが、市場の主流はすっきりとしたピルスナーに偏重しており、長らくキレとのどごしが至上とされてきた。 一方、筆者が中国・中朝国境の街の隠れた名店で出合った北朝鮮ビールは、日本とは方向性が違う。キンキンになるまで冷やして飲む軽やかでキレのあるビールではなく、英国直伝の本格的な醸造スタイルを色濃く残す、極めて重厚な味わいのビールが多い。 グラスに注がれた深い黄金色、あるいは黒色の液体は、麦芽の芳醇な香りとホップの心地よい苦味、そしてきめ細やかな泡立ちで、素晴らしいクオリティだ。 この一杯を前に、「北朝鮮=粗悪品」という先入観が鮮やかに打ち砕かれた。実は北朝鮮は、国家レベルで極めて高度な醸造技術を保持する「隠れビール大国」なのだ。 イギリスの老舗醸造所の設備を移築 なぜ、北朝鮮のビールは本格的なのか。その背景には、国家の威信をかけた歴史的執念とも呼べるエピソードが隠されている。北朝鮮の超有名ビール「大同江ビール」を軸に、時計の針を2000年に戻そう。 その年、イギリスで約200年の歴史を持つ老舗のビール醸造所「Ushers(アッシャーズ)」が経営破綻した。同じ頃、北朝鮮は「苦難の行軍」と呼ばれる経済不況に瀕しており、そのために諸外国の人道的支援を受けていた。その援助で調達した資金を元手に、故・金正日総書記の特命の下、この醸造所の設備一式を150万ポンドで丸ごと買い取ったのである。 驚くべきは、その徹底ぶりだ。現地に派遣された北朝鮮の代表団と技術者たちは、単に主要な機械を搬出するだけでなく、工場建屋の中のワークショップ全体を完璧に何も残さず解体して運び出した。当時の関係者が「壁に埋め込まれた配線に至るまで全て引き剥がして持ち去った」と回顧するほど。そうして、数千kmも離れた平壌へと移設したのだ。 厳格な管理体制が育むクオリティ ヨーロッパから「そっくりそのまま」運ばれた設備は、平壌の寺洞(サドン)区域に「大同江ビール工場」として再構築され、2002年に生産を開始した。 ちなみに、このときに定められたのが、現代も守られている「麦芽と白米の配合比率によってナンバリングする」という命名規則である。これはロシアの「バルティカ」ビールに倣った手法で、1番から7番までの番号が几帳面に振られており、徹底したナンバリングで多様なフレーバーを管理しているのだ。 結果的に、この社会主義らしい厳格な管理体制が生んだクオリティは、敵対する欧米メディアすらも驚愕させた。米ニューヨーク・タイムズ紙は「朝鮮半島で生産された最高のビールの一つ」と絶賛し、英経済誌『エコノミスト』にいたっては「北朝鮮が韓国を打ち負かすことができる唯一の分野」とまで称した。 これこそが、彼らのビールが妥協なき本格派である最大のカラクリなのである。…