
1: 七波羅探題 ★ TraFww0T9 2026-07-12 08:56:21 東洋経済2026/07/12 06:30 「普通」とは何でしょうか。普通という言葉の定義としては「大多数の人々が共有し、標準的と見なされるもの」を指すと思います。「皆がだいたいこうしているという状態」と言ってもいいでしょう。 かつて、「1億総中流」と呼ばれた時代がありました。1979年の『国民生活白書』では「中流意識が定着した」と公式に評価されました。当時は、経済成長期、大量生産・大量消費の時代で、白黒テレビ・電気洗濯機・電気冷蔵庫という「三種の神器」がほぼ全国の家庭に普及し、続いて「新三種の神器」と呼ばれたカラーテレビ・クーラー・自動車が夢から現実になりつつある時代でした。 夫妻と子ども2人の核家族が標準世帯と呼ばれ、一戸建てなどのマイホームが達成可能な目標でした。確かに、この時代は多くの人々が自分たちは「普通」であると認識していたでしょう。 しかし、今やその「普通」が普通ではなくなりつつあります。いわば「普通のインフレ」が起きているといっていいでしょう。そして、これこそが今の婚姻減や少子化につながっています。 皆婚時代で標準世帯が普通だった時代は当然、未婚率は低く、出生数も多かった。誰もがいつかは結婚して家族を持つのだろうと将来を思い描いていましたし、事実それは難しいことではありませんでした。それが「普通」だったからです。しかし、もはやその「普通」は失われつつあります。 普通に恋愛して、普通に結婚して、普通に子どもを産み育てるという「普通」は一部の上位層に限られるようになりました。恋愛も結婚も家族を持つことも、今では「普通ではない」のです。なぜなら、普通のはずの中央値のレベルでは到底達成できるものではなくなったからです。特に、2014年以降の10年でそれは顕著になりました。客観的な数字でご紹介します。 (中略) 総婚姻数は24.6%減ですが、これらはほぼ20代の婚姻減です。25〜29歳の男女の初婚率もそれぞれ30%以上も減っています。出生数は婚姻数に完全に依存するため、婚姻の減少がそのまま出生の減少(31.6%)となって表れています。 が、注目すべきは、CPM(Children per Mother=1人以上産んだ母親の出生数)は2.06人から2.10人へとむしろわずかながら増えていることです。これが増えているのに、出生数や出生率が減少しているのは、15〜49歳の無子率(未婚と既婚無子の合計)が47.1%も激増していることによります。つまり、出生数・出生率の低下は、子育て世帯が子どもを産んでいないのではなく、そもそも未婚が増えていることによるものと結論づけられます。 ■結婚・出産できるのは「世帯年収が高い層」 重要なのは、ここからです。初婚や出生の3割減と完全に負の相関で一致するのが、結婚・出産できた世帯(児童のいる世帯)の世帯年収の増加率です。平均値で見ると実態を見誤りますので中央値を計算して比較します。 児童のいる世帯の世帯年収中央値は22.8%増、20〜30代に限って比較すると31.8%増です。これだけ大きく増えたのはよいことだと思ってしまうかもしれませんが、一方で、児童のいる世帯数は20.5%減です。つまり、世帯年収の中央値があがったのは、そもそも世帯年収が高い層しか結婚・出産ができなくなったことを意味します。その証拠に、単身世帯を含む総世帯の世帯年収中央値はこの10年間で全く増減はありません(勤労世帯のみなので無職世帯や無職高齢世帯は含まず)。言い換えれば、ある程度の経済上位層しか結婚も出産もできなくなった「結婚と出産のインフレ」が進んだということになります。 そうした状況は、20代の若者の意識にも影響を及ぼします。20代が結婚できると思う世帯年収意識の中央値は、この期間に24.5%もインフレしました。同時に、出産(第一子)できると思う世帯年収意識の中央値も26.6%増です。若者の意識だけではなく、これは実体がそうなっているからです。ちなみに、この間の物価指数上昇は1割程度に過ぎず、実体インフレよりも「結婚と出産のインフレ」が過度に進んだと言えます。 そうした「結婚・出産のインフレ」とほぼ同じように、20代若者の「不安のインフレ」も起きています。若者の「将来の経済的不安」は23.7%も上昇しました。要するに、婚姻や出生が3割も減った構造的背景には、そもそも結婚や出産するための経済条件が3割近くもインフレしてしまい、それをクリアできている経済上位3割層は別にして、残り7割の中間層の若者にとって、結婚も子どもも「贅沢品・手に入れられない高額ブランド品」と化してしまったわけです。 もうひとつ、人々の主観的な「普通意識」もインフレしてしまっています。 ※表、及び全文はリンク先で…