全てのレス元スレ 1:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2020/05/26(火) 16:27:31 :kC/0uo990.net 秋は鮮やかにやってきた。 床に紙質の硬い雑誌をずりおとし、 かわりに一枚の毛布を顎まで引っ張りげ、 一九四五年の秋にゴミ捨場で死んだパルチザンのように背をまるめ、 両膝を腹に引き寄せていつものようにけじめなく眠りについた。 俺の眠りはいつもそうだ。 たとえばこんな不吉なファンタジーをよく経験する。 カシミールの山の中をさまよっているとつゆ知らずにいつの間にか中国国境を越えている。 本人には越境の意志などまるでない。 しかし、自分の凍る息の輪からふと視線をあげると、 山稜には狙撃兵たちが送電線の雀のように並んでいるのが見える。 なにが起こったのか理解できないままに佇む。 きびしい声調の中国語の警戒が体に突き刺さる。 それでも俺は動かない。 動けないのだ。 数秒か数十秒後には結氷した顔面を一種の清涼感をともなって貫いていくライフル弾の予感がし、 予感はやがて確信に変わる。 確信は少しずつ恐怖に形を変え、恐怖はわずかの熱を呼び、凍った眉を溶かす。 水滴が流れ、眼に入りこみ視界がにじむ。 俺は、なぜか自分の部屋の窓辺にかけたままの洗濯物を思い出す。 折り畳み、鼻を押し当て、それから引き出しにしまわなければ。 こう寒くては凍って繊維がばらばらになってしまう。 俺はどこか知らない国の言葉で、山稜の雀たちに叫ぶ。 待て、撃つな。 洗濯物を取り込むまで待ってくれ。…