13: 名無しさん 2025/07/04(金) 22:17:04.571 ID:jJgS02sDL 「終わりのキャッチボール」2025年7月5日。明日、日本は滅びると言われている。人々が姿を消し始めた都市の片隅、幕張のスタジアムに2人の姿があった。千葉ロッテマリーンズ、種市篤暉投手と吉井理人監督。照明も音もないグラウンドに、2人の影が落ちる。「最後に、ちょっとだけ投げてもいいですか」種市がそう言うと、吉井はゆっくりミットをはめた。「ええで。投げてみ」低く穏やかな声で、吉井が答える。ボールが空を切り、ミットに収まる。一球、また一球。言葉は少ない。ただ、確かなテンポでボールが往復する。「俺、野球しかやってこなかったですけど、後悔してないです」種市がぽつりとつぶやく。「そらそうや。お前はようやった。立派な投手やったで」吉井はマスク越しに微笑んだ。風が通り抜け、スタンドの階段に小さな紙くずが舞う。スタジアムは静かで、どこまでも広かった。ボールが止まり、2人はベンチに座った。帽子を外し、空を仰ぐ。雲一つない青空だった。「明日、監督はどこにいますか?」「ワシか? ここやな。最後までこの球場におる。監督としてな」「……そうですか」種市は静かに笑った。空の色が少しずつ赤く染まっていく。その景色を、2人は黙って見つめていた。明日、世界は終わる。けれど今日、ここに確かに野球があった。翌日、特に何も起こらず千葉ロッテマリーンズは今季18度目の完封負けを喫した…