飛行機のエンジンは、大きな損傷が起きると機体から外れるように作られている。海外の掲示板でそんな話が広まった。半分は本当で、主翼とエンジンをつなぐ部分には、わざと弱く作った「ヒューズピン」という部品が今も入っている。ただし、この設計の考え方は1990年代に大きく変わった。成田を発った日本航空の貨物便も、そのころ空でエンジンを1基失っている。 今日の知ってた? ✈️ ボーイング747などのエンジンは、中が空洞の「ヒューズピン」で主翼に取り付けられている。過大な力がかかるとこのピンが先に壊れ、燃料タンクを兼ねる主翼を守る。ただし米連邦航空局(FAA)の現在の説明では、この仕組みは主に地面との衝突に備えたもので、飛行中にエンジンが外れることは意図していない。 背景:主翼を守るための「弱い部品」 電気のヒューズは、過電流が流れると自分が切れて、高価な機器を守る。ヒューズピンの発想もこれと同じだ。FAAが事故の教訓をまとめた資料によると、ボーイング747ではエンジンを吊るす支柱(パイロン、ストラットとも呼ばれる)と主翼のあいだに5か所の取り付け部があり、その一つひとつに、周りの構造より弱い中空のピンが入っている。 なぜ主翼を優先するのかというと、旅客機の主翼の中は燃料タンクになっているからだ。エンジン故障や異常な飛行、着陸で極端な力がかかったとき、エンジンごと主翼をえぐってしまえば、タンクが破れて燃料が漏れる。そこで、主翼側と取り付け金具をピンより強く作っておき、ピンが先に切れるようにした。ピンの中をどれだけ削るかで強度を決め、材料のロットごとに試験をして、狙った力で壊れるように管理する。 当時のボーイングには、飛行中でもエンジンを安全に切り離せるという考え方があった。FAAの資料はこれを「安全な分離」の思想と呼ぶ。切り離されたエンジンは主翼の上を越えて飛んでいき、機体のほかの部分には当たらないと考えられていた。先に作られた707で、実際にそうなった例があったためだ。 もう少し詳しく 話題の発端は1990年のトイレの漏れ。元の投稿で話題になったのは、米国家運輸安全委員会(NTSB)の記録に残る1990年1月4日のノースウエスト航空の事例とみられる。乗員乗客145人を乗せたボーイング727が高度約1万700メートルを巡航中、大きな音とともに3番エンジンの出力が失われた。緊急事態を宣言して別の空港に降りると、そのエンジンは機体からなくなっていた。回収したエンジンの圧縮機の羽根には、柔らかい異物を吸い込んだ跡があった。前方トイレの点検口では外側のシールに部品が欠け、内側のシールは正しく付いておらず、機体の外板には青い液体の跡が伸びていた。漏れた液体が凍り、はがれて吸い込まれたとみられる。NTSBが原因としたのは、担当者がトイレを正しく整備しなかったことだ。けが人は出ていない。なお、この記録はピンの働きについて書いていないので、この便のエンジンがヒューズの設計どおりに外れたのかどうかまでは、ここからは言えない。 「安全に外れる」はずが、アムステルダムで崩れた。1992年10月4日、エル・アル航空1862便のボーイング747貨物機は、離陸から10分足らずの高度約2,000メートルで右主翼の3番エンジンを失った。外れたエンジンは主翼の上を越えず、外側の4番エンジンに当たって、これももぎ取った。翼の前縁も壊れ、機体はアムステルダムのアパート群に墜落する。機内の4人全員と地上の43人が亡くなった。オランダの事故調査報告書は、内側のヒューズピンの金属疲労が発端だった可能性が高いとしたうえで、パイロンの設計と認証そのものが不十分で、点検で安全を保つ仕組みも機能しなかったと結論づけた。守るはずの部品が、ふだんの飛行で疲労して先に割れてしまったのである。 成田発の日本航空46E便にも起きていた。その半年後の1993年3月31日、成田からシカゴへ向かう途中でアンカレッジに寄った日本航空の貨物便46E便が、離陸直後に激しい乱気流に巻き込まれ、機体は操作もしていないのに約50度傾いて、2番エンジンをパイロンごと失った。機体と乗員、整備はエバーグリーン航空が提供する契約で、操縦していたのも同社の乗員である。残りのエンジンで引き返して無事に着陸し、機内にも地上にもけが人はいなかった。ただし、これはヒューズピンの事故ではない。NTSBは、ピンは原因に関わっていないとし、パイロンの壁にあった疲労亀裂で弱っていたところへ、乱気流の横向きの力が限界を超えてかかったためと結論づけた。 設計はどう変わったか。1991年に台湾で起きた中華航空の事故も含め、747ではエンジンの脱落が続いた。ボーイングはピンの形を見直し、亀裂の起点になりやすかった内側の複雑な削りをやめた第3世代のピンを開発する。さらにFAAは1995年、運航中のすべての747に、作り直したパイロンへの交換を義務づけた。新しいパイロンは1か所の取り付けが完全に壊れても残りの構造で支えられる。ピンは今も残っているが、FAAの説明では、その役目は地面にぶつかったときに翼のタンクを守ることだ。別の事故の資料でも、FAAは「エンジンの分離は、とくに飛行中は制御できない出来事だ」とし、飛行中に外れることは意図していないと書いている。「損傷したらわざと外れる」というのは、1990年代の事故が書き換える前の考え方に近い。 外れる場所を選べない怖さ。エンジンの脱落は今も起きる。2025年11月4日には、米ルイビルを離陸したUPSのMD-11貨物機で左エンジンがパイロンごと外れ、乗員3人と地上の11人が亡くなった(重傷者1人ものちに亡くなった)。NTSBは後部の取り付け部の軸受に金属疲労の跡を見つけており、調査は資料の公表時点で続いていた。これもヒューズの作動ではなく、取り付け部品そのものが壊れた例である。 海外の反応 1. 海外の名無しさん 調査の結論が「トイレのシールの取り付けミス」で、漏れたものが凍った塊をエンジンが吸い込んだって話だろ? トイレの氷で旅客機のエンジンがもげたのか。すごい世界だな。 2. 海外の名無しさん(>>1への返信) え、飛行機ってトイレに流したものを機内に溜めてないの? まさか空にまいてるの? 3. 海外の名無しさん(>>2への返信) 溜めてるよ。空港で専用のトラックが抜き取る。今回はシールが悪くて漏れたから、機体の外で凍って氷が育っちゃったってこと。 4. 海外の名無しさん(>>3への返信) トイレの汚水は昔から機内に溜めて着陸後に処分する。ただ手洗い場や調理室の排水は飛行中に捨ててる機体が多いんだ。787みたいな最新の機体は、それも全部溜めるらしい。 5. 海外の名無しさん(>>1への返信) 文字どおり「クソがファンに当たった」わけだ。英語でいちばん縁起の悪い慣用句を、727が実演してしまった。 ※注:英語の shit hits the fan は「大変なことになる」という意味の俗な慣用句。なお記録に残っているのは、トイレの青い液体が漏れたという話で、中身そのものの塊だったとは書かれていない。 6. 海外の名無しさん 勘違いしないでほしいけど、押すと飛び出す脱出ボタンみたいな話じゃないからな。車のドライブシャフトの継ぎ手みたいに、大事なところを守るためにわざと一番弱くしてある場所があるってだけ。 7. 海外の名無しさん(>>6への返信) 前に見た番組の記憶だけど、ドラッグレースのトップフューエルも似た発想だったはず。過給器を留めるボルトをわざと弱くして、圧が上がりすぎたら過給器が持ち上がって逃がす。つないであるから飛んではいかないらしい。 8. 海外の名無しさん(>>7への返信) ボルトの話は知らないけど、圧が上がりすぎたときに割れて逃がす破裂板が付いてるのは確かだよ。 9. 海外の名無しさん(>>7への返信) つまり、ピストンがとんでもない速さで客席や駐車場へ飛んでくるのは避けたいってことか。そりゃそうだ。 10. 海外の名無しさん そりゃあ、怒り狂った火の玉を翼に付けたまま飛びたくはないよな。主翼の下にあんなものをぶら下げてるんだから。 11. 海外の名無しさん(>>10への返信) 火災のときに手動で切り離すレバーなんて無いぞ。主翼を傷めそうな壊れ方をしたら、決められた箇所が先に折れるってだけだ。回ってるエンジンが急に止まれば、その回転の勢いはどこかへ行くしかない。 12. 海外の名無しさん(>>11への返信) 俺は飛行機に同乗する整備士だから知ってるよ。さっきのはふざけて書いただけなんだ。 13. 海外の名無しさん(>>12への返信) 素朴な疑問なんだけど、飛行機の整備士に「飛ばない整備士」っているの? 14. 海外の名無しさん(>>13への返信) ほとんどが飛ばないよ! 俺は乗員と一緒に移動して、整備拠点の無い場所で問題が起きたときに直して回る役なんだ。 15. 海外の名無しさん 話題の機体はボーイング727で、エンジンは翼の下じゃなく胴体の後ろにある。機首を少し上げて飛ぶから、前方のトイレから漏れて凍ったものがはがれると、そのまま右のエンジンに入るわけだ。国内線で降りる先も多かったし、けが人も出なかった。 16. 海外の名無しさん(>>15への返信) エンジンを残すのも落とすのも、良し悪しがあるんだよな。数年前にファンブレードが飛んだ777は、機内動画の揺れがすごかったのに外れなかった。ユナイテッド232便は尾部のエンジンが壊れて油圧を全部失った。 17. 海外の名無しさん ボーイングのパイロンまわりの仕事をしてたんだけど、747は元々エンジンが外れるようにできていて、エンジンの脱落が原因の墜落が起きてから、外れにくい作りに改められたんだよ。 18. 海外の名無しさん(>>17への返信) アムステルダムのエル・アルの747の動画を見たばかりだ。ピンが飛行中に壊れて、外れたエンジンが隣のエンジンまで持っていって、住宅地に落ちた。守るための仕組みが裏目に出た話だった。 19. 海外の名無しさん 要するに、胴体や翼に穴が開く前に壊れるよう、ほかのどこよりも弱く作ったボルトがあるってことでしょ。設計って、壊れ方まで決めるものなんだな。 20. 海外の名無しさん 外れるなら翼の下へ抜けてほしいけど、シカゴのアメリカン航空191便は翼の上を越えて落ちたんだよな。あのエンジンは前縁まで一緒に持っていってしまった。 21. 海外の名無しさん(>>20への返信) あれはそもそも整備でフォークリフトを使ってエンジンを外し付けしたときの傷が原因だったはず。弱く作った部品の話とは別で、壊れちゃいけないところが壊れた事故だ。 22. 海外の名無しさん これ、メンター・パイロットの最新動画を見て投稿したでしょ? 俺も見たばかりだから分かるぞ。 23. 海外の名無しさん エンジンが外れて落ちてくると聞いて思い出すのは、映画『ドニー・ダーコ』だな。あの家の人たちは身をもって知ったわけだ。 24. 海外の名無しさん 俺は飛行機を落としかねなくて、しかも直し方を分かってるとき以外は何も触らない。制御ボックスから燃えてる冷却ファンを止めたことが1回あるだけ。整備ってそういう仕事だよ。 まとめ エンジンの取り付け部にわざと弱いピンを入れる設計は本物だが、「飛行中に安全に切り離す」という考え方は、1992年のアムステルダムの墜落と1990年代の脱落の連続で改められた。コメント欄はトイレの氷で盛り上がりつつ、整備士たちが「外れるのは良し悪しだ」と現場の感覚を語っていた。壊れ方まで設計する難しさが残る話である。 参考資料 米連邦航空局(FAA)「事故の教訓:ボーイング747-200F、エル・アル航空1862便」(英語) 米連邦航空局(FAA)「事故の教訓:DC-10-10、アメリカン航空191便」(英語) 米国家運輸安全委員会(NTSB)「最終報告 MIA90IA047:ノースウエスト航空ボーイング727」(英語) 米国家運輸安全委員会(NTSB)「飛行中のエンジン分離:日本航空46E便、ボーイング747-121」(1993年・英語) 元ソース: 航空機のエンジンは、大きな損傷が起きると機体から外れるように設計されている 投稿 「大きな損傷でエンジンが外れる設計」はどこまで本当? 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