
洒落怖321から、「エピローグ」で唐突に始まる投稿。読み終えると、冒頭の意味も、タイトルの意味も変わってくる話。 606: 名無しのオカルト 2014/07/01(火) 17:08:33.69 ID:Bl8jHjBN0 エピローグ 変わったといえば、何もかも変わっていた。駅、道幅、家、塾、大規模量販店・・・ ここが25年前に自分が住んでいた場所なんだと、地図の記号で示されなければ とても信じられないような変貌ぶりだった。リフォームが済んだ古民家のような外見 の清清しさ、それがかえって記憶を注意深くたどらせ、見覚えのあるものを探させた。 いや、探さなくても同じものがあった。この街を忙しく行き来している人々の、他人の 事など興味がない無感情なイメージは、自分がはるか昔に感じた異邦人の孤独と 相も変わらず同じ臭いたっだ。 寒い冬の陽は、3時過ぎにはもう力をなくし始める。たよりない影が私の足元をフラ フラ歩いているが、正体のない輪郭は、かえって嬉しそうに行動の自由を得ている ようにも見えた。 15分も歩いただろうか、私は忘れもしないM木アパートに曲がっていく路地の端に たどり着いた。付近の様子は違っていたが、記憶に鮮明に残っている場所だった。 折込広告が大量に出た日など、一度に自転車の荷台に積み込めない時、一旦この 場所に仮置きしておく所だったからだ。 ここを曲がれば、そこに古い木造のM木アパートが見えるはずだ。 私は、この路地の向こうに当時の自分の部屋を見つけたときの事を想像して、思わ ずコートの襟をはおりなおした。目にしたものに体温を奪われそうな気がしたからだ。 引用元: ・死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?321 607: 名無しのオカルト 2014/07/01(火) 17:10:56.18 ID:Bl8jHjBN0 私は歩き出し、鼓動とは逆のゆっくりとした動作で顔を上げ、そこにあるべきものを 見た。しかし、私の記憶にある物は跡形もなく、こぎれいな同じ形の戸建の並びが 知らない道に続いていた。 呆気ないほどの思い出の場所。 もし懐かしさを求めてここに立ったなのなら、時の流れにため息をついたかもしれない。 しかし私の思い出は、記憶に浮かび上がることすらおぞましいものだ。 当時は舗装もなく、梅雨の泥道を何度も行き来したことを思い出しながら、乾いたアス ファルトの小石を踏んで歩いた。「何もかもなくなったか。あの団地もないだろうな」 そんなことを、少しほっとしながら考えていたとき、私の右の視界に何かが紛れ込んできた。 それは、同じ形の家が並ぶこの場所には全く場違いな、赤錆びた階段だった。 道路から1.5mほど入ったところから、鉄の階段が伸びている。両側には民家が迫り 薄暗い雑木林のわずかな幅から、階段が腕のように生えているのだ。 場違いなのはそれだけではない。階段の目的地、そこにあるべき2階が雑木に覆い 隠されて見えず、おそらく「無い」ことだった。 608: 名無しのオカルト 2014/07/01(火) 17:31:48.52 ID:Bl8jHjBN0 わずかに残った塗料に教えられるまでもなく、かつて私が居た「北の端の部屋」に上 っていく階段であったことはすぐわかった。少し強くなってきた風が雑木林通をり抜け、 手すりをゆらしておめき声をたてた。ざらざらした鉄の臭いが顔に吹きかかってきたが 私は目を閉じることすらできなかった。 雑木林の向こう側を見ようと、誰かが言ったような気がした。ここまで来たんだから、と 私が私に言ったのだろう。草だらけの路地に足を入れ階段に近づこうとしたとき、背中に 車のクラクションが鳴った。 通行に邪魔なのもそうだが、あきらかに怪しい奴と思われたのかもしれない。 私は思いとどまって、持ってきた携帯電話を取り出し、カメラで階段を撮影した。あたりは すっかり暗くなり、たよりないフラッシュが周囲を一度だけ闇の中から浮かびあがらせた。 「あの団地にも行ってみようか・・でもこの変わりようじゃ、暗くなって探すのは無理かな」 私は元きた方向に足を踏み出して、携帯カメラの写真を確かめながら歩きだした。 そのとき一段と強い風が吹き、あの階段から猫のうなり声のような風切り音が鳴った。 頭上の電線が揺れ、私は思わず携帯電話を足元に落としていた。 吹きあおられたからではない。携帯の写真にには私の顔が写り、その顔が笑っていたのだ。 もう振り返ることはできなかった。 612: 名無しのオカルト 2014/07/01(火) 18:53:40.92 ID:ykpXvtPl0 >>606 >相も変わらず同じ臭いたっだ。 >>608 >手すりをゆらしておめき声をたてた。 うん、まあ面白かったよ 609: 名無しのオカルト 2014/07/01(火) 17:35:21.92 ID:Bl8jHjBN0 その夜、私は市内のホテルにチェックインした。持ってきたノートPCをネットに繋ぎ、25年前 では考えられもしなかった「情報」という街の記憶をたどっていた。昔の自分の新聞配達地域 の町の名と、「自殺」「殺人」という検索キーワードを画面に並べて、数秒後に見たものは 小さな町には不似合いな数の「事件と事故」だった。 賃貸不動産の、事故物件情報サイトと重ね合わせて見てみると、○営住宅501号室のあった 辺りから、紡績団地、そしてM木アパートまでの線上に事故物件が、まるで一本の・・・順路帳 のように繋がっていた。 私は、もう一度、ネットの事件簿、事故の履歴を見なおして、特異なことに気がついた。 殺人・・犯人が自殺、無理心中、孤独死、全焼等々、どれもことごとく全員が死んでいるのだ。 犯人逮捕や、生き残りが見当たらない。一人も生きてはいられない、それが「奴」の来た跡だ。 私は、事の発端となった○営住宅501号室あたりを、ストリートビューで表示させようと、マウス ポインタを近づけた。その時、突然携帯が鳴って、私は驚きのあまりにまったく関係のない場所 にピンをしてしまった。 携帯の着信を取ろうとするのだが、路上に落としたためか、故障してしまって何を押しても反応 しない。知人からの電話だったが、私はバッテリーパックを引き抜いて静けさを取り返した。 気を取り直して、もう一度マップに戻そうと画面を見てみると、見覚えのある鉄塔が写っている。 「これは、あの新聞販売所の近くじゃないか?」 610: 名無しのオカルト 2014/07/01(火) 17:45:35.65 ID:Bl8jHjBN0 501号室のことは後にして、その付近をマウスクリックで動いてみた。なんとか販売所のあたり まで来たが、画面にはそれらしき建物はなく、代わりに小さな駐車場が広がっていた。 初めてここにきて、新聞配達のことを教えてもらったこと、折込広告で指を切ったり、不入りや 集金で、ここのオヤジにこっぴどく叱られたこと、そして気味の悪い配達地域を何度も変えてくれ とお願いしても、無視され続けたこと、そんなことを思い出していた。 「新聞奨学生とはいえ、酷い仕事だったなあ。順路帳4冊だぜ」、おもわず口について声が出た。 私は、もうそれ以上PCを触る気が失せて、電源を切って封筒のようなベッドの中にもぐりこんだ。 翌朝、ホテルのTVニュースを見ていた私は、聞きなれた地名に注意を引き寄せられた。 それは、駐車場で血を流し倒れている夫婦が発見され、病院へ搬送されたが間もなく死亡した というニュースだった。どちらかが刺して殺害後に自殺したというのだ。 「また誰も生き残っていない・・」 駐車場がどこなのかは知らない。しかし、私は昨日見たあの駐車場以外にないと確信している。 奴の息が、自分の首筋にかかったような恐ろしさを覚えて、私は急いでホテルを後にした。 帰りの新幹線でふと気付いたことがある。新聞配達の順路帳は販売所が起点で、そこに帰ることだ。 忌々しい順路帳の上を、奴は今でもうろついているのかもしれない。 (終わり) 615: 名無しのオカルト 2014/07/01(火) 20:22:19.82 ID:wpfRJlej0 これ小説投稿サイトのホラー部門ならそれなりなのになぁ 616: 名無しのオカルト 2014/07/01(火) 21:05:47.51 ID:rQYAcsDoi じゃあ今度から小説投稿サイトに投稿するわ じゃあの 627: 名無しのオカルト 2014/07/02(水) 13:34:03.50 ID:IQ7l65hrG >>606いきなりエピローグで始まっても意味が分らないんだけど、どの話の続きなの? 管理人:順路帳——新聞配達員が担当エリアを回る順番を記録した帳面のこと。独特な文体でちょっとクスッとさせられるけど、読み進めるとじわじわ背筋が冷える配置になってる。最後の一文まで気を抜かないで。あなたの思い出の街にも、こんな「地図にない道」はないだろうか。コメ欄で聞かせてほしい。…