ムカデは漢字で「百足」と書き、英語の centipede もラテン語の「百」と「足」からできた言葉です。ところが、脚がちょうど100本の種類は1つもありません。ムカデの脚の対の数は決まって奇数になり、100本(50対)にはならないからです。胴の節が2つ1組で作られることが関わっていると考えられています。海外掲示板では「奇数対」をめぐる算数の混乱に、ヤスデや各国の呼び名の話が加わりました。 ※注:「対」は左右1組のことです。1対=2本なので、50対なら100本になります。 今日の知ってた? 🐛 ムカデの脚は、胴の節1つにつき1対(左右2本)。脚の対の数は種類によって15対から191対まで幅があるが、どの種類でも奇数になる。100本は50対で偶数なので、ちょうど100本のムカデの種類はいない。ありうるのは98本(49対)や102本(51対)だ。 🧬 奇数になる理由として有力なのが、胴の節のでき方だ。2004年に英ケンブリッジ大学などのチームが胚を調べたところ、胴の節はまず2つ1組で作られ、あとから1つずつに分かれていた。そして先頭の1対の脚は、毒を持つあご(顎肢)に変わっている。このあごも数に入れると胴の節は偶数になり、あごに回った1対を除いた残り、つまり歩く脚の対は奇数になる、と研究チームは考えている。 📖 和名の「百足」は、脚が多いことを表した当て字。英語の centipede も「百の足」という意味だ。日本語でも英語でも「百の足」と呼ばれているのに、100本の脚を持つ種類はいない。 🗾 日本でよく知られる大型のトビズムカデは21対(42本)、家の中にも出るゲジは15対(30本)。どちらも奇数対だ。 🦶 1つの節に脚が2対ずつあるヤスデ(英語名の millipede は「千の足」)では、2020年に西オーストラリアの地下60メートルで、脚が1,306本の個体が見つかった。1,000本を超える脚のヤスデが記録されたのは、これが初めてだった。 背景:ムカデとヤスデはどう違う? ムカデは「ムカデ綱(唇脚類)」にまとめられる節足動物です。頭のうしろに、たくさんの節が連なった胴が続き、節ごとに左右1本ずつ、1対の脚が付いています。肉食で、先頭の1対の脚が変化した「顎肢(がくし)」という毒のあごで獲物を捕らえます。グループの学名 Chilopoda も、ギリシャ語の「唇」と「足」を合わせた言葉で、この毒のあごを指しています。世界大百科事典によると、日本にいるのは約130種です。 名前は見たままで、英語の centipede は「百」と「足」を組み合わせた言葉です。日本語の「百足」も、世界大百科事典によれば、脚が多いことから当てた字です。日本語の「百」はここでは「たくさん」くらいの意味で、本数を数えて付けた名前ではないわけです。ちなみに中国語では「蜈蚣」と書き、数字は入っていません。 姿のよく似たヤスデは、別のグループ「ヤスデ綱(倍脚類)」です。胴のほとんどの節に脚が2対ずつあり、ムカデより脚が密に並んで見えます。京都大学の研究紹介でも「1節あたり2対の脚をもっているのが特徴」と説明されています。主に落ち葉など朽ちた植物を食べ、毒のあごは持たず、人をかむこともありません。身を守るときは、体に並ぶ小さな穴から、においのある液を出します。英語名の millipede は、ラテン語の「千」と「足」からできています。 ムカデの脚の対の数は、種類によって15対から191対まで幅があります。少ないほうはイシムカデやゲジの仲間の15対、多いほうは土の中で暮らす細長いジムカデの仲間です。脚の本数でいえば30本から382本。そのどこにも、ちょうど100本はありません。 もう少し詳しく 「2つ1組」で作られる胴。奇数になる仕組みを調べたのは、英ケンブリッジ大学動物学博物館のアリエル・チップマンとマイケル・エイカム、アイルランド国立大学ゴールウェイ校のウォレス・アーサーです。2004年に学術誌『カレント・バイオロジー』で発表しました。調べたのは、スコットランド北東部の海岸で採れる細長いムカデ、ストリガミア・マリティマの胚です。体の節を作る遺伝子のはたらきを追うと、胴はまず2節ぶんを1つの単位として区切られ、それがあとで1節ずつに分かれていました。このムカデは、脚のある節の数が個体によって45から53まで違いますが、どの個体も奇数です。 節が2つずつ作られるのなら、進化の中で節が増えたり減ったりするときも2つずつになり、取りうる数はかぎられます。ただ、なぜ「偶数」ではなく「奇数」に落ち着くのかについて、研究チームは答えを断定していません。そのうえで注目したのが、毒のあご(顎肢)です。顎肢はもともと脚だったと考えられ、これも数に入れると、胴の節は偶数になります。歩く脚の対が奇数なのは、偶数のうち先頭の1対があごに回ったからだ、という見方です。 例外は「突然変異」。1999年11月、イングランドの地方紙ウォリントン・ガーディアンが「クリスのムカデ発見、科学史に残る」と報じました。サンダーランド大学の博士課程にいた22歳のクリス・ケトルが、サンダーランド近くのウィットバーンで研究用の標本を集めていて、脚の対が偶数のムカデを見つけたのです。脚は48対。それまで見つかっていたのは奇数対だけで、突然変異によって1対多くできたと見られています。本人は「何千匹ものムカデを集めてきたが、こんなにわくわくする発見をするとは思ってもみなかった」と話し、所属する研究センター長のウォレス・アーサー教授(先の研究チームの1人)は「すばらしい発見」と評しました。2009年にも、節の並びは整っているのに脚の対が偶数という、おとなのムカデが論文で報告されています。どちらも、ごくまれな例外です。 生まれたときから脚がそろっているとは限らない。元スレッドのタイトルは「生まれつき」と書いていますが、ムカデは卵からかえり、育ち方は大きく2通りあります。ジムカデやオオムカデの仲間(トビズムカデもこちら)は、卵の中で脚が全部そろってからかえります。一方、ゲジやイシムカデの仲間は、脱皮のたびに節と脚が増えていきます。名古屋市の解説によると、ゲジは1齢幼体のときは脚が4対しかなく、脱皮を重ねて約2年でおとなになると、15対の脚がそろいます。「いつも奇数」は、おとなの脚の数の話です。 日本のムカデの脚の数。日本大百科全書によると、日本のムカデの脚は、イシムカデの仲間が15対、オオムカデの仲間が21対(そのうちアカムカデの仲間は23対)、ジムカデの仲間が31対以上です。体長10〜15センチほどになるトビズムカデは21対で、頭が鳶色(赤茶色)をしています。家の中で見かけることの多いゲジも15対。並べてみると、どれも奇数です。ちなみにゲジは、トビズムカデなどと違って人をかむことがなく、カやゴキブリを食べる益虫でもあります(名古屋市の解説)。 「千の足」に届いたヤスデ。英語で「千の足」と呼ばれるヤスデも、長いあいだ名前の数に届いていませんでした。2021年12月に学術誌『サイエンティフィック・リポーツ』で発表された新種エウミリペス・ペルセポネは、2020年に西オーストラリア州ノースマンの西南西約100キロ、鉱物探査のために掘られた穴の地下60メートルで採集されました。脚が1,306本あったのはメスの1匹で、体の節は330。目も体の色素もなく、メスの体は幅0.95ミリ、長さ9.5センチほどです。それまでの最多は、米カリフォルニアのヤスデの750本でした。属名のエウミリペスは「本当の千の足」という意味で、種小名は、地上から冥界へ連れ去られたギリシャ神話の女神ペルセポネにちなんでいます。 海外の反応 1. 海外の名無しさん 自分の力じゃ一生たどり着かなかった種類の豆知識だな。ムカデの脚を数えてみようなんて、人生で一度も思ったことがない。 2. 海外の名無しさん(>>1への返信) ムカデのほうは、奇数回つまずきながらここまでたどり着いたんだろうけどね。脚がそれだけあれば、どこかで1本は引っかける。 3. 海外の名無しさん タイトルの「遺伝的な決まり」っていうのは、脚の付く節が2つ1組で作られることだよ。つまり脚は4本ずつ増える。しかも先頭の1対は毒のあごに作り変えられているから、ちょうど100本にはならない。 4. 海外の名無しさん(>>3への返信) 正直ちょっとがっかりした。体のどこかに、相方のいない脚が1本だけぽつんと生えているのを想像してたのに。 5. 海外の名無しさん(>>3への返信) 生き物ってけっこう気まぐれだから、100本のムカデがどこかにいても驚かないけどな。ニワトリだって脚が4本で生まれることがあるんだし。 6. 海外の名無しさん(>>5への返信) 実際、1999年にイギリスで、脚が48対のムカデが見つかってるよ。当時の地元紙は「科学史に残る発見」と報じてた。ただ、これは突然変異だと見られているから、あくまで例外。 7. 海外の名無しさん(>>6への返信) 48対なら96本か。100本との差はたったの4%。誤差の範囲だし、もう「百足」を名乗らせてやってもいいと思う。 8. 海外の名無しさん コメント欄が混乱してるみたいだから書いておく。「奇数本」じゃなくて「奇数対」ね。100本は50対で偶数だから無理。いちばん近いのは98本(49対)か102本(51対)。 9. 海外の名無しさん(>>8への返信) このスレ、算数が苦手な人と、タイトルを最後まで読まない人の二択になってて、見ていてちょっと楽しい。 10. 海外の名無しさん ちなみに人間も、脚の対の数は奇数に限られてる。1対だけど。ムカデとは気が合いそうだ。 11. 海外の名無しさん まあ、名前に数字が入っていても当てにならないのはいつものことだよ。百年戦争だって、実際には116年続いたしね。 ※注:イングランドとフランスの百年戦争は、1337年から1453年まで続きました。 12. 海外の名無しさん(>>11への返信) 「だいたい百年戦争」に改名すべき。「少なくとも百年戦争」でもいいけど、それだと締まらないか。 13. 海外の名無しさん 日本語でもムカデは「百足」、つまり「百の足」って書くんだよ。言葉が違っても、数えずに名前を付けるところは同じなんだね。 14. 海外の名無しさん(>>13への返信) 日本語の「百」は「たくさん」の意味でも使うから、数え間違いってわけじゃないと思う。「百貨店」に並ぶ品物が、ちょうど100種類しかないわけじゃないのと同じで。 15. 海外の名無しさん オランダ語だと、ムカデは「duizendpoot」で千の足、ヤスデは「miljoenpoot」で百万の足。どっちも盛りすぎだろ。 16. 海外の名無しさん(>>15への返信) ドイツ語は、ムカデが「Hundertfüßer」で百の足、ヤスデが「Tausendfüßer」で千の足。英語と同じ並びだね。数え方が大ざっぱなのは、どの国も一緒らしい。 17. 海外の名無しさん 1,000本を超える脚のヤスデが見つかったのって、ほんの数年前なんだよね。英語で「千の足」と呼ばれてきたのに、それまでどのヤスデも名前の数に届いてなかった。 18. 海外の名無しさん(>>17への返信) ヤスデはムカデと違って、脚の対がいつも偶数なんだって。だから理屈の上では、脚がちょうど1,000本のヤスデもありえる。 19. 海外の名無しさん(>>18への返信) それは違うと思う。その1,306本のヤスデ、2で割ると653対で奇数だよ。同じ論文に載ってるオスも778本で389対。少なくとも「ヤスデは偶数対だけ」ってことはない。 20. 海外の名無しさん 細かいことを言うと、ムカデは「生まれる」んじゃなくて卵からかえるんだけどな。生まれつき脚が何本かなんて、誰が数えたんだ。 21. 海外の名無しさん(>>20への返信) しかも、かえったときから脚がそろっているとは限らない。ゲジの仲間は最初は脚が4対しかなくて、脱皮のたびに増えて15対になる。かえった直後の本数と、おとなの本数が違うんだよ。 22. 海外の名無しさん 日本に住んでるんだけど、家に出るゲジは15対で30本、大きなトビズムカデは21対で42本だった。図鑑で確かめたから間違いない。どっちもちゃんと奇数。 23. 海外の名無しさん(>>22への返信) 日本といえば、線路で大発生して列車を止めたことがあるヤスデもいるよね。その名も「キシャヤスデ(汽車ヤスデ)」。同じ地域では8年に1回、決まって大発生するらしい。 24. 海外の名無しさん 人間だって指は10本が普通だけど、自分は11本で生まれた。人間でもそういうことがあるんだから、ムカデの遺伝子だけが完璧なわけがない。 25. 海外の名無しさん(>>24への返信) だからこそ、そういう例外は「発生の途中で起きた異常」として扱われるんだよ。人間の6本指と同じで、例外がいるからといって「おとなの脚の対は奇数」という決まりが崩れるわけじゃない。 まとめ ムカデは日本語でも英語でも「百の足」と呼ばれますが、脚の対はどの種類も奇数で、ちょうど100本(50対)の種類はいません。胴の節が2つ1組で作られ、先頭の1対が毒のあごに変わることが関わっていると考えられています。コメント欄では「奇数対」の算数でつまずく人と正す人のやり取りに、各国の呼び名や1,306本のヤスデの話が加わり、「ヤスデは偶数対だけ」という書き込みにも数字で反論が入りました。 元ソース: ムカデは名前に反して、脚がちょうど100本で生まれることが生物学的にありえない。遺伝的な決まりで、脚の対の数がいつも奇数になるから The post 「漢字で“百足”、英語でも“百の足”なのに、脚がちょうど100本の種類はいない」ムカデの脚の対が決まって奇数になる理由とは? appeared first on みんな知ってた?【海外の反応】.…