362:1/3:2006/04/16(日) 00:26:16 ID:ig8QeaNu0某ゲーム会社で働く友人が体験した話。名前をKとする。 ある連休の日、Kは仲間と飲み会をして結構酔ってしまったらしい。 その飲み会をした場所は彼の実家に近く、飲んだ後は自分のマンションに 戻らずにKは久しぶりに実家に帰る事にそうだ。実家は郊外にあり、 方向が一緒の仲間の車に便乗し、国道の適当な場所で降ろしてもらった。 実家までは2kmほど歩かなくては行けなかったらしいが、既に終電もなく、 タクシーすらつかまりそうになかったので、そのまま彼は歩いて帰る事にした。 「じゃあなー」「ああ、またな」 車で送ってくれた友に挨拶をし、彼は歩き始めた。 郊外とはいえ、辺りは古い街並が残っており、うら寂しい。ましてや深夜のため、 それはなおさらであった。道の両側に並ぶ古い木造家屋を見ながらKは歩いていた。 Kにとっては初めて通る道だった。しかし町はよく知っている町だったので、 アルコール分100%の頭でゆっくりと帰りの歩みを彼は進めていた。 「橋は渡ったかな?渡ったはずだよな・・・?渡らなかったかな?」 すぐ近くに川があるはずだった。大きな川だ。けれども水の流れる音はちっとも 聞こえてこない。背後でかすかに聞こえていたはずの国道を走る車の音も、 いつの間にか聞こえなくなっていた。――そんなときだった。 キーーーーーッ ききききききききッ。 静まりかえった闇をやぶって、夜の街に甲高い音が響いた。獣の鳴き声にも、 鳥の声にも似ていた。だが、どうやら人間であるらしい。ガラスの表面を針で 引っかいたような、神経を逆なでする奇声だ。ひどくいやらしい、笑い声にも思えた。 (・・・・・?なんだ?) 頭の後ろにチリチリしたような物を感じながら、Kは反射的に辺りを見回した。 誰もいない。何もない。奇声はあれ1回だけのようだった。 ――頭の中で尾を引いていた奇声も、すっかり現実味を欠いていた。 (気のせいじゃないよな・・・?人間の声だったよなあ?鳥とかじゃないな・・・) 考えながら闇の向こうを見ていたKの耳に、聞こえてくる音があった。それは奇声ではなかった。…