1 名前:仮面ウニダー ★:2023/08/29(火) 06:48:59.08 ID:tc8v2J68.net ー前略ー 20代の半ば、はじめて韓国を訪ねた。下関から関釜フェリーに乗り、釜山に着いた。 当時はそのルートが、いちばん安い韓国への渡航方法だった。LCCのない時代である。 ビザも必要で、通常は7日間の滞在しか許されなかった。 港に近い喫茶店に入った。韓国は当時も喫茶店が多かった。 コーヒーを頼むと、白い小さめのカップに入ったコーヒーが出てきた。それをひと口啜って、僕は首を捻った。 「お茶?」 周囲を見渡した。僕はコーヒーを頼んだつもりだ。周囲の客も僕と同じカップでコーヒーらしきものを飲んでいる。 もうひと口啜ってみる。確かめるように目を閉じる。かすかだがコーヒーの味はする。ということはコーヒー。 「しかし薄い」 ■かつて、韓国のコーヒーは味が薄かった。カフェブームの今は? その後、数えきれないほど韓国を訪ねた。知り合いのオフィスに出向くと、 相手から、「コーヒーにしますか、それとも紅茶?」と訊かれることがよくあった。僕はだいたいコーヒーと答える。 同じ値段なら(この場合は相手の会社が出してくれるのだが)、コーヒーを頼んだほうが得した気分になる。 コーヒーは濃く、紅茶は薄い。紅茶を2杯ぐらい頼んでつり合うような気がする。 そもそも、紅茶は湯に紅茶のパックを入れるだけだ。コーヒーの淹れ方はさまざまだが、もう少し手間もかかっているはずだ。 そういう感性の持ち主だから、まるでお茶のように薄い韓国のコーヒーには違和感を抱いてしまう。 紅茶とつり合いがとれているといえばそれまでなのだが。 昔、韓国にはコーヒーの出前があった。仕事で会社を訪ねると、担当者がどこかに電話をかける。 すると若い女性が、お盆にコーヒーを載せてもってきてくれた。ときにその場でカップにコーヒーを注いでくれることもあった。 そしてこれまたときに、僕の横に座ることもあった。 「いやーッ、韓国の習慣でね。厳しい金額交渉のときなんかいいですよ。出鼻をくじくというか、和やかになる」 そんな説明を受けたが、そのときに飲んだコーヒーもまた薄かった。 この缶コーヒーは薄かった。なんだか損をした気分 韓国のコーヒーは薄い。それは僕の韓国での不満だった。しかしその後、韓国のコーヒー事情は少しずつ変わっていった。 チェーン店が増え、スターバックスをはじめとするアメリカのシアトルコーヒー系のコーヒーが主流になってきた。 韓国では、「スタバ圏内」という言葉まで生まれた。中心街に家があるという意味になる。 しかしそのコーヒーも日本に比べれば、まだかなり薄かったが、「お茶では?」と疑うほどではなくなった。 だが、エスプレッソを好む舌にはやはり物足りない。 今年の8月、ソウルにいた。泊まったゲストハウスは朝食がついていなかった。近くのコンビニでパンと缶コーヒーを買った。 コーヒーは砂糖の入っていないタイプを選んだ。 コンビニの前にあるテーブルに座り、缶コーヒーを飲む。 「薄い……」 カフェチェーン店のコーヒーと比べると水を飲んでいるかと思うほど薄い。 やはり韓国人は薄いコーヒーが好きなのだろうか。 その日、会った韓国在住の日本人に水を向けるてみた。するとこんな言葉が返ってきた。 「それはね、アメリカーノとアメリカンの違いですよ」 「はッ?」 アメリカーノとアメリカン……。韓国はアメリカーノで日本がアメリカンなのだという。話は思わぬ方向に向かうことになる。 下川裕治 韓国TVドラマガイドONLINE 2023.8.28 引用元:…